14話 お前ら、正直に寂しいって言えよ。な?

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

 

 

 

 

間抜けなチャイムが鳴り響く。

ああ、もう四時間目が終わったんだ。

今から掃除かー。

憂鬱になってきた。

 

 

 

 

 

「どこ行くの?。」

「あー・・・掃除?」

「昼休みにわざわざ掃除なんて、ボランティアだねえ。には似合わないと思うけど?」

「アハハ、ほっといてくれる?では、部室を掃除しろという女王命令が下ったので行って参ります!」

「生きて帰ってくるのよ?」

 

 

 

 

 

咲が興味なさそうに手を降って見送ってくれた。

生きて帰ってくるのよって・・・・おかしくない?

咲はまたお弁当食べるご様子。

よく太らないね。

私ならきっとブヨブヨおデブちゃんになってるところだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす!」

 

 

 

 

 

部室のドアをノックせずに入る。

視界に飛び込んできたのはせっちゃんではない数人の女生徒。

どの子もかわいらしく、真ん中の子なんて下手すりゃモデルにでもなれちゃうんじゃないかってくらい綺麗な顔立ちだ。

そして、せっちゃんはその奥にいた。

何やら足を組んで資料の整理をしているようだ。

 

 

 

 

 

「・・・・どちらさん?」

「この子が新しいマネージャー?」

「うん、そう。っていうから。」

 

 

 

 

 

私の質問を綺麗に無視をしてモデルちゃん(←早速のあだ名)が振り返ると、せっちゃんがモデルちゃんの質問に淡々とした口調で答えた。

オッツ。自己紹介の手間が省けちゃったよ。

シクヨロできなくなっちゃったよ。

モデルちゃんがじろじろと私の足の先から頭のてっぺんまでじっくりと観察してくる。

少し居心地が・・・。

こうまでして見られると自然と目が泳ぐ。

 

 

 

 

 

「ふーん。じゃ、始めますか・・・。」

 

 

 

 

 

笑顔で手を叩いたモデルちゃん。

後ろのせっちゃんがちらりと私に視線を向け、また資料へと視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ちゃんはいないのかい?」

 

 

 

 

 

昼休みが始まってしばらくしてのこと。

昼飯も食べ終わり、雑談が始まろうとした時、隣のクラスの幸村が教室を見渡しながらやって来た。

どうやらを捜している様子。

 

 

 

 

 

はアンタらが使ってる部室の掃除に行ったよ。昼飯も食べないでね。」

「部室の掃除?聞いてないな。・・・そうか、ありがとう。」

 

 

 

 

 

少し眉をしかめたあと、にこりと作った笑顔を向ける。

幸村精市、嫌いなタイプだ。

私はこういう、人と一線を置いて愛想を振り撒く奴が大嫌いなんだ。

だからテニス部の奴らはあまり好かない。

あのマネージャーの無道も含めて。

 

 

 

 

 

「もう一人のマネージャーさんが朝言いに来てたわ。昼休みに掃除がしたいって。」

「雪菜が?そうか、じゃあ心配いらないな。部室の掃除は二人に任せておこう。」

「・・・・・心配いらない・・ねえ。」

 

 

 

 

 

口を挟んできた咲が不満そうに視線を俯かせた。

まあ言いたいことはわからなくもないけどな。

そんな咲を気にする事なく幸村が手に持っていた紙を私の机の上に置いた。

・・・入部届けか?

 

 

 

 

 

「これ、帰ってきたちゃんに渡しておいてくれない?」

「別にいいけど・・・。」

「明日部活の時に持って来てとも伝えてくれると有り難いな。」

「はいはい。わかりましたよ。」

 

 

 

 

 

私は紙を受け取ると、それを折り畳んでポケットに入れた。

幸村の作り笑顔をこれ以上見たくなくて、目を伏せた。

私があまり好意を抱いていないことに気付いたのか、幸村は「よろしくね。」とだけ呟いてさっさと教室を出て行った。

 

 

 

 

 

「露骨ね。」

「悪かったな。すぐ態度に出ちゃうタイプなんだよ。」

「まあ、幸村君は気にしない人だから大丈夫よ。嫌われても好かれても、どうでも良さそうじゃない・・・彼。」

 

 

 

 

 

咲はもういない幸村が出て行ったドアを見つめた。

確かに、幸村はあまり気にしないタイプだろうな。

普段、作った自分でみんなに接している幸村。

好かれてもそれは自分が好かれているわけじゃなく、偽りの自分が好かれているだけ。

嫌われるのも同じ。

嫌われているのは作った自分。

だから好かれても嫌われてもどうでもいいのかもしれないな。

 

 

 

 

 

「本音を隠して生きて・・・何が楽しいのかねえ。」

「沙季にはわからないわ。人種が違うもの。」

「人種かよ。ま、咲にもわかんないでしょ?アンタも本音で生きてる人間だからな。」

「お互い様ってことね。」

 

 

 

 

 

お互いにしょうがないと言った感じに苦笑いを浮かべる。

私は前に向き直り、龍やジャッカルの席に視線を移すと、今日はそこに仁王がいなかった。

ジャッカルと龍が二人で寂しく弁当の突き合いを繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブン太サン!俺の弁当へずるのやめてくださいよ!」

「うっせぇ!おとなしくハンバーグをよこせ!」

 

 

 

 

 

ギャーギャーと屋上に煩い声が響く。

弁当を抱え、逃げ回る赤也とフォークを片手に追い掛ける丸井。

青筋を浮かべながら黙々と箸を進める弦一郎の隣で俺は弁当の蓋を閉じた。

今日は雪菜がいない。

に買わせたスナック菓子を全て完食してしまった丸井は、雪菜の代わりに赤也の弁当をへずろうと走り回っている。

正直のところウザイ

 

 

 

 

 

「赤也、丸井、おとなしく座って食え。」

「だってブン太サンが!」

「弦一郎を見てみろ。」

 

 

 

 

 

口答えをしようとした赤也に忠告をしてやる。

見ればわかるだろう。

弦一郎から出ている怒りのオーラが。

箸を持つ手が震えているじゃないか。

アル中か?

 

 

 

 

 

「ゲッ!・・・・わかりましたよ。」

「丸井、お前もだぞ。」

「へーい。」

 

 

 

 

 

そろそろ疲れていたのか、二人ともあっさりとその場に座り込んだ。

それにしても男五人だけで昼食とは微妙なものだ。

紅一点の雪菜がいなければ幸村も仁王もいない。

そのうち一人、また一人といなくなって最終的に弦一郎と二人きりにでもなったらどうしようか。

そしたら俺は一人で昼食を取るとしよう。

あ、そういえばジャッカルを忘れていたな。

 

・・・・・まあいいか。

 

 

 

 

 

「今日はいい天気ですね。」

「ああ、そうだな。」

 

 

 

 

 

柳生が空を見上げながら呟く。

俺は見上げはしないが返事を返す。

このあとに続く言葉はわかっていた。

確率で言えば100%と言っていいほどだったから。

 

 

 

 

 

「こんな日こそ、皆さん揃って昼食が取れればよかったんですけどね・・・。」

 

 

 

 

 

ほら。

一字たりとも間違ってなどいない。

当然の結果だな。

そして俺はまた言うんだ。

気のない、しかしはっきりとした口調で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

何か・・・・そろそろみんな動き出してる雰囲気だね。

仁王さんは何処へ行ったんだーーー!!!?

 

お前最高だよ!!って人はをクリックだ!!

 

2007.02.20