13話 特に意味のない行動にあまり疑問は持つな。
「おはよう。」
朝。
机に足を乗せて頭の後ろで手を組み、ガムを噛んでいる、
超がつくほど笑顔な丸井様が私の席に君臨なさっておられました。
泣きそうです。
「お、おはようございます。丸井く・・・・いや丸井様。」
「で?」
で?
で?と言われても困る。
で?と言われても私は何て言えばいいのでしょうか?
私に何を望んでおられるのでしょうか?
何て言えばいいんだよ!!!
「で?と言われましても・・・・・私の席で何してらっしゃるのでございましょうか?」
ギロリと睨まれ、思わず怯む私。
ガムをパチンと音を立てて割る。
「何でって?昨日のことについてだけど?どうして帰ってこなかったのか聞きに来たんだよ!!」
「ぎゃ、ご、ごめんなさい!!!」
「俺のポテチは!!?ポテチ五袋ちゃんと持ってきたんだろうな!!」
「も、持ってきましたとも!!ごめんなさい!!」
ひい!
朝からどうして私はこんなにも怖い思いをしなくちゃいけないんだよ!!
丸井ブン太怖いよー!!
私は焦って鞄からポテチ五袋を取り出す。
さっきから謝ってばかりだよコンチキショウ!
「なんだ、本当に買ってきてんじゃん。」
「そ、そりゃ・・・まあ。」
「ふーん、じゃな。」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
ブン太はポテチの袋を抱えると、席を立った。
そのままスタスタとドアに向かって歩いていく。
その背中は妙に満足そうだ。
・・・ほんとにポテチ目当てにここにいたわけ!?
どれだけ食い意地張ってんだよ!
用が済んだらそれかよ!
私は不貞腐れながら椅子に腰掛ける。
「、おはよ。」
「あら、来たの?おはよー。」
「あ、亀ちゃんに咲!おはようございます!」
笑顔で挨拶を交わすと、またお互いもとの作業に戻る。
ま、こんなものだ。
だけど挨拶は気持ちいい。
挨拶するだけで心が爽快に・・・!!
なんて大げさだね。
「さん。」
顔を上げると前のドアから手招きして立ってる女の子がいた。
「あ、せっちゃん!」
私は目を輝かせて席を立ち上がり、せっちゃんの元へ向かう。
せっちゃんは顔を歪め、困ったような素振りをみせる。
嫌がっているように見えるのは気のせいだろう。
「・・・・せっ・・ちゃん?」
「うん!雪菜だからせっちゃん!」
「そう。まあ好きに呼んでくれて構わないけど・・・。」
そう言ったせっちゃんは気まずそうに愛想笑いを浮かべた。
私のことあまり好きじゃないのかな。
まあまだ知り合って二日目だし?
これから仲良くなればいいよね。うん。
そうだそうだ。
人間誰でも初めはこんなものだ。
グダグダ感が出るもんなんだよ。
で、気付けば友情?みたいな。
アハハ。
「せっちゃん!ところで私に何か用だったの?」
「え、ああ、うん。・・・・お昼休みね。部室の掃除をしようと思うの。」
「部室の掃除?」
「そう。部活中は忙しくて出来ないし、部活後は学校閉まるギリギリまで活動してるから無理だし・・・
だからね、やるなら昼休みしかないの。」
昼休みね〜。
せっかく昨日覚えた新しい技をジャッカルで試そうと思ったのに・・・。
残念。お預けか。
「うん。わかった!じゃあ昼休み始まったら速攻部室に行けばいい?」
「そうしてもらえると助かるわ。それじゃあまた後でね。」
「うぃ。」
敬礼の真似をして教室の中へと入る。
あー掃除やだー。
ハウスクリーニング呼ぼうよ。
ここが氷帝だったらなー。
お金払って部室の平和は保たれるんだろうけど・・・。
自分の席に戻ると、そこには亀ちゃんが座っていた。
どうしたのかな?
席間違えてるのかな?
これは言ってあげるべきかな?
「亀ちゃんの席、一つ前だよ?」
「わかってるよ。私みたいに馬鹿じゃないもん。」
「私も馬鹿じゃないもん。」
「いや、アンタは馬鹿よ。自覚しなさい。」
「馬鹿じゃないもーん。どうでもいいけど亀ちゃんは私の席で何してんの?」
私が机に手をつくと、亀ちゃんはごまかすように席を立ち上がった。
隣で早弁を済ませた咲が横目で様子を窺う。
何よ・・・。
くすぐったいな。
「アンタも大変だなーって思っただけ。」
「何で?」
「さあね。私なら絶対しないことをするから、かな?」
「?、だからって私の席に座るのとどう関係があるの?」
「ただ、こうやっての視線から見たらの気持ちがわかるのかなーって思ったからだけど・・・
わかるはずないよね!アンタみたいな変人の気持ちなんてさ!」
そう言って、アハハと色気のない笑いを飛ばした。
そしてさり気にムカつく台詞をさらりと言われた。
亀ちゃんの考えてることがいまいち理解できなかったので、咲に助けを求めようと視線を向ける。
お、お弁当二個目!?
なんてブラックホールな胃袋だ!
羨ましい!羨ましすぎるぞ!
咲は黙々と二個目のお弁当を食べ始めていた。
とりあえず私も席につこうと、咲を横目見ながら手探りで椅子をさがす。
あれ・・・ない。
「・・・・何座ってんの?仁王君。」
「おはようさん。」
「あ、おはようございます。・・・・ってそうじゃなくて!」
「うるさいよ。」
咲がギロリと横目で睨む。
箸にはウインナーが突き刺さっていた。
ああ、本当にウインナーが好きなんだね。
おいしいもんね。
仕方ないよね。
うん。
「仁王君、自分の席に戻った方がいいよ!もうすぐ根田ちゃんくるって!」
「俺この席がええの。端っこはつまらん。」
「ぜ、贅沢者!!端っこは誰もが狙うベストポジションなんだよ!?」
私の席に態度でかく座っている仁王の肩を掴み、揺らす。
若干、仁王が怒っているように見えた。
だからすぐに手を離した。
っていうか今日の私の席、何か知らんが人気だな。
見ると誰これ構わず座ってる気がする。
「、今日一日席交換しよ?」
「マジで!?する!!」
「すんのかよ。」
張り切って手をあげたらグギッて言った。
前の席から亀ちゃんが呆れたように鼻で笑った。
私は鼻歌を歌いながら仁王の席に座る。
よーし、これで今日は授業中何してもバレないぞー!
「委員長委員長!今日一日よろしくね!」
「あ、は、はい・・・。」
前の席の委員長ではなく生き物係りである委員長に一声かける。
びくびくしながらも返事を返してくれた。
何か言いたげだったけど私はとりあえず隣の席のジャッカルに忘れた教科書の交渉に出ることにした。
だって、どうせ言いたいことって僕は委員長じゃない的なことだろうし・・・。
委員長じゃなきゃ委員長ってあだ名をつけちゃダメだっての!?
そんなことはない。
だから委員長は委員長でいいんだよ!(←無理矢理)
ジャッカルは快く教科書を貸してくれると承諾してくれた。
何無駄に親切なのよ。
ジャッカルのくせに。
あとがき
仁王の行動は理解不能です。
私の部活の先輩にもこんな行動とる人いますね。
いきなり現れてくだらない質問してきたり・・・。
こういう時は大抵、苦笑いで逃げ切ります。
これが一番です。はい。
2007.02.16