9話 へそ曲がりってよく言われる。でも見てみればへそは曲がってなかった。
「にーおーくーん、おはよーございまーす!」
朝練を終えた仁王が自分の席にテニスバッグを置く。
そんな仁王より遅く教室に入ってきた私は、わざわざ遠回りをして眠たそうな仁王の隣まで歩いて行った。
「おはようさん。・・・・・・・・・・えらくご機嫌じゃな。何かあったんか?」
「ええ!!?わかる!!?わかる!!?聞きたい!!?」
「聞きたくない。」
そう言うと、仁王は机に伏っしてしまった。
そんな仁王を気にすることなく私は机をがたがたを揺らし、仁王の眠りを妨げる。
何でかって、今朝の赤也の話がしたくてしたくて堪らなかったから。
仁王が不機嫌に顔を上げる。
うっわ、顔に“ウザイ”って書いてあるよ。
怖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ウザイ。」
ほらね。
わかってるんだけどグサッてくるのよ。
だけどまだまだめげない。
先生がくるまで居座ってやる。
私は仁王の前の席の委員長を押しのけ、椅子を奪い取った。
気の弱い委員長は戸惑った後、しぶしぶ空いてる席に移動した。
「、可哀想やからやめたって。アイツ、泣きそうな顔しとる・・・・。」
「大丈夫だよ。委員長は強いの。強いから委員長なの。」
「意味わからん。その前に委員長って誰じゃ?アイツは委員長なんかやっとらんよ?」
「ええ!?そうなの!!?やってそうな顔してるのに!!?意外だね!!」
仁王は呆れたように机に頬杖をついた。
どうやら本当に委員長は委員長ではないらしい。
後ろの掲示板には生き物係と書いた欄に彼の名前が書いていあった。
なあ〜んだ。
黒縁眼鏡に七三頭だからてっきり仕切っちゃうタイプかと思ったよ。
いい子ちゃんの優等生?
あ、これ偏見か・・・・・・。
ってか生き物係って何すんの?
このクラス何も飼ってないじゃん。
今度亀持ってきてあげようか・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・、マネージャーやるんか?」
「へ?」
仁王がダルそうに私を見ながら言った。
ドッキリ、心臓が飛び跳ねる。
やりたい、って気持ちはあるけど・・・・・・・・・・・・・・・
それにマネージャーって憧れでもあるけど・・・・・・・・・・・・
いい噂聞かないじゃん?
「・・・・・・・・・・・虐めとかある?」
「まあ、ないとは言えん。」
「え〜・・・・それなら私・・・ちょっと嫌かも。」
痛いのヤだし・・・。
考えてもみろ。
もしかすると痛いだけじゃすまないかもしれない。
最悪・・・・・・・・・・死んじゃうかも?
なあんて実際そんなにドロドロした虐めがあるわけ・・・・・・・・・・・・・あるのかな?
やっぱりあるのかな?
私の知らない世界なだけであってあるのかもしれない。
「それならよか。入りなさんな。」
は?
今なんて言った?
私は自分の耳を疑った。
今仁王、良かったって言ったよね?
仁王は私に入ってほしくなかったって言うの?
ズキンと胸が苦しくなった。
「・・・・・・・・・・・仁王君は私がマネージャーになるの嫌なの!!?」
「嫌じゃなか。」
「じゃあ何で!!?」
「もし入ったら、お前が傷つくことになる。」
仁王がじっと私の目を見て言うもんだから、私は次の言葉が出なかった。
私が傷つくことになる?
それはやっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・虐め?
そんなにキツイの?
女の子って怖いもんね。
やっぱりそうだよね。
マネージャーなんてそう、簡単なことじゃないんだよね・・・・・・・・・・。
私は急に居心地が悪くなって下を向いた。
「じゃあ入る。」
仁王が目を見開いて頬杖ついていた手を顔から離す。
私はニヤリと笑って席を立った。
気がつけば黒板には“自習”の文字が書かれていた。
。
嫌いなこと:諦めること、逃げること。
あとがき
仁王ってやっさしいじゃーん。
ってか嫌なことから逃げ出す奴って実は私だったり・・・・・・・・・・・・・・・・・。
おい。
2007.01.05