3話 曖昧な返事をする奴は大概いい方に傾いてるからもう一押し。

 

 

 

 

 

 

「アイツ、仁王は何かこのクラスで浮いてんだ。みんなの輪に自分から入ってこないっつーか・・・・・

話したら(適当だけど)話してはくれるんだけどなあ。」

 

 

 

 

 

龍ちゃんが呆れたように溜め息を吐いた。

仁王ってそんなキャラなの!?

まあ、クラスに馴染んで目立ってるのは想像できないけど・・・。

ある意味目立ってはいるけどさ。

何か俺は何も知りませんって感じで本読んでるし。

その本もなんだか面白くなさそうに読んでるし。

まったくもって周りを無視したマイワールドだね!

私が妄想してる時みたい。

 

 

 

 

 

「テニス部の人には自分からでも話に行くのにね。変な人。」

「ま、それはテニス部全員に言えることじゃない?テニス部っつってもレギュラーだけだけど。」

 

 

 

 

 

咲の呟きに亀ちゃんが仁王を見たまま言った。

仁王はこちらを見向きもしない。

絶対視線には気付いているはずなのに・・・。

っていうかこの距離なら会話も聞こえてんじゃないの?

それなのにシカトって・・・・・・・・・何か、ムカツク。

 

 

 

 

 

「じゃあジャッカルは?」

「ジャッカルは、コイツは特別なんじゃね?コイツだけじゃん。テニス部以外とつるんだりしてんのって。」

 

 

 

 

 

咲の問いに今度は龍ちゃんが答えた。

ちょっと、何照れてんのよコイツ。

ジャッカルのくせに!

せっかく仁王と同じクラスになれたのにどうしてジャッカルがこんなので仁王はあんなのなのよ!(←代名詞ばっかでわかりません)

もー腹が立つ!

赤也とも学年違うし隣はジャッカルだし!

こんなのトリップしたってつまんないー!

 

 

 

 

 

「ちょ、!?」

 

 

 

 

 

亀ちゃんがいきなり立ち上がって歩き出した私を見て、驚いた。

仁王の席の前に座る。

仁王は視線を一度だけ私に向けてすぐに本に戻した。

 

 

 

 

 

「こんにちは仁王君。ワットユアーネーム?」

「俺は日本語しかわからん。」

「・・・・名前何?」

「仁王。」

 

 

 

 

 

ブッチン。

私の何かが今、一本だけ切れた。

それは知ってるっつーの!

今名前呼んだだろうが!!

 

 

 

 

 

「仁王君。下の名前は何ですカ?(知ってるけど。)」

「雅治。」

「そうなんだ!私は。シクヨロ☆なんつって!」

「・・・・・よろしく。」

 

 

 

 

 

視線はずっと本に向けられたまま。

頬杖をついて、怠そうに私の質問に受け答えしていた。

周りはハラハラとそんな私と仁王を見ているのが視線でわかる。

何か感じる。

 

 

 

 

 

「仁王君、何読んでるの?」

「本。」

「わかってるよ。何の本?」

「さあ。何じゃろ。わからん。」

 

 

 

 

 

ブチブチブチン。

私の何かが今、三本切れた。

合計四本が切れて、私はとうとう我慢ができなくなってしまった。

仁王の手を掴んで自分の席に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

「何じゃ?痛い。放せ。」

「みんな!私ね、みんなをあだ名で呼ぶの趣味なんだけどー・・・クラス全員分のあだ名考えてよ!」

「どんな趣味だよ。まあ悪くないね。私はもうあだ名だし・・・龍もあだ名だから、ジャッカルとか何にするよ?」

 

 

 

 

 

亀ちゃんがジャッカルを見ながら悩みだす。

仁王が自分の席に戻りたそうに後ろへ引っ張ってくるけど、私は仁王の手を放さない。

女だからか、力を加減してくれているおかげで仁王も抵抗を見せるだけで私の手を振りほどくことはできなかった。

 

 

 

 

 

「ジャッカルって何かもうジャッカルってのがあだ名みたいなもんじゃね?」

「ま、それもそうだね。じゃあ仁王君は雅治にちなんでまー君ね!」

 

 

 

 

 

私がニッコリ微笑むと、仁王の眉がピクリと上がった。

おーおー嫌そう嫌そう。

 

 

 

 

 

「お、いいじゃんまー君。可愛いじゃん。」

 

 

 

 

 

亀ちゃんが乗ってくれる。咲も頷いていた。

 

 

 

 

 

「嫌じゃ。俺はあだ名なんかいらん。」

「だーかーらー、があだ名で呼ぶのが趣味だっつーからつけてんじゃん?まー君いいじゃん。親しみ感あって。」

 

 

 

 

 

龍ちゃんが呆れたように仁王を見上げる。

仁王は心底嫌そうに顔をしかめ、私の手を振りほどいた。

 

 

 

 

 

「別に親しみ感なんていらん。」

「あ、・・・じゃあニオちゃんにする?」

「だから嫌じゃ。あだ名はいらん。そんな名前で呼んだら俺は絶対返事せん。会話もせん。」

 

 

 

 

 

嫌そうに私を睨む仁王。

私はニタリと笑う。

ふふふ。引っ掛かったわね!仁王!

誰があだ名で呼ぶのが趣味なんだ!

そんなわけのわからない趣味をもってる奴がいるわけないでしょう!

アンタは詐欺師のくせに私に騙されたのよ!

 

 

 

 

 

「じゃああだ名じゃなく普通に仁王君って呼んだら返事も会話もするんだよね!?ちゃんとするんだよね!?」

「・・・・・は?・・・まあ、普通に。」

「ちゃんと!するんだよね?」

「何が言いたい?」

 

 

 

 

 

仁王は首を傾げて私の目を見た。

初めて目が合った。

何だ、ちゃんと目を見て話せるんじゃん。

やっぱ生は違うね。生は。

険しい顔に迫力あるよ。

怖いよ。うん。

 

 

 

 

 

「仁王君って呼んだらちゃんとした会話してくれるんだよね?約束だよ!男に二言はないよね!?」

 

 

 

 

 

私が手を差し出すと、仁王はやっと意味を理解したのか、一瞬、豆鉄砲を喰らったような顔をして私を見た。

みんな黙って私と仁王を交互に見遣る。

 

 

 

 

 

「・・・・・まあ、会話くらい別によかよ?」

「違うの!みんなが一致団結してる時とかにちゃんと輪に入って会話するってこと!いい!?」

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

仁王の視線が下を向く。

私が思うに、仁王は輪に入るのが嫌って訳ではないと思う。

あくまで私の見解だけど・・・間違ってはないと思う。

 

 

 

 

 

「・・・いんじゃない?仁王。私は大歓迎だよ?」

「仁王に一線を引いていた私達も悪いけど・・・仁王がちゃんと輪に入ってきてくれたら私達は受け入れたわ。

今からでもいいじゃない。も来たことだし、みんな一緒に仲良くしようよ。」

 

 

 

 

 

亀ちゃんが、咲が笑った。

二人共、優しくて力強い言葉を言う。

仁王は二人を見て、また私に視線を向けた。

つりかけ寸前だった差し出したままの手に、仁王の手が絡む。

 

 

 

 

 

「プリッ。」

 

 

 

 

 

・・・・・・何だ?

これは了解の意味なのか?

怒ってるって意味なのか?

それとも意味はないのか!?

私は手を取ってもらえた喜びと、戸惑いと疑問に頭がグルグルと回る。

でもやっぱ手を取ったってことはいいってことだよね!?

うん。絶対そうだ。

 

 

 

 

 

「ありがとう仁王君!」

 

 

 

 

 

エヘッと笑うと龍ちゃんが「これで三年五組、一人加わって無事一致団結!?」

と叫んだことによって、残りの数分間はみんなで騒ぎまくった。

仁王はまた自分の席に戻って本の続きを読もうとしたけど、亀ちゃんと龍ちゃんに無理矢理私達の席に引き戻された。

あまりにも煩さすぎて、隣の担任が注意しに来た時、

我がクラスの担任、根田ちゃんはちょうど戻って来た時だったため、何とか根田ちゃんは軽い注意で済んだらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

仁王サン、何かノリ悪くない?

でも仁王サンのことだからこの日を境に、変わってくれると思いますが・・・・・

この状態があと一日くらいは続くと思われます。はい。

(だって・・・・仁王って素直じゃないだもん。)

 

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2006.12.12