I WANNA BE ・・・4

     I love you. But this is secret.

 

 

 

 

ドアを開ければアイツがいた。

 

 

 

 

 

「だーかーらーさっさと着替えて行こうぜ!」

「ちょ、やめてくださいよ!俺今から部活ですってば!!」

「んなもんサボッちまいな!お姉さんと楽しく行こうよ赤也くん!」

「だああああああ放せえええええ!!」

 

 

 

 

 

何だ?

何が起こっている?

ええっと、とりあえず上半身裸の赤也とそんな赤也の半パンのゴムを引っ張る

着替えてる最中なんだろう。

赤也はの魔の手から逃げようと必死になってジャージに着替えようとしている。

それを何故か部室にいるに妨害されているってなわけか。

部室にはジャッカルと柳がいるけど二人とも我関せずを保っている。

ここに真田がいないだけまだマシってもんだから赤也も真田が来る前に着替え終わらせたいんだろう。

 

 

 

 

 

しゃーない。

ここは先輩である俺が何とかできたらちょっくら助けてやるか。

できたら、だけどな。

 

 

 

 

 

「ナニ?何でが部室にいんだよ。」

「あーデブン太。」

「放り出すぞテメェ。」

 

 

 

 

 

ぱっと赤也を掴んでいた手を放し、振り向く。

赤也から「助かった・・・」と疲れ切った声が聞こえてきた。

よし、今日は赤也の奢りだな。

 

 

 

 

 

「赤也にちょっかい出してんじゃねえよ。さっさと帰れ帰宅部。」

「んだと?帰宅部なめんなよコラ。・・・じゃなくて聞いてよブン太!!」

「ひい!わ、わかった!わかったからヤ・メ・ロ!!気持ち悪ぃ!!」

「気持ち悪いって何よ腹プヨ!」

「腹プヨ言うな!プヨってねえよ!!」

 

 

 

 

 

俺に抱き着いてきたを引きはがす。

さりげに俺の腹摘んでいきやがるし・・・。

そんなことはまあどうでもよくて。(いいのか?)

完全にご機嫌斜めなコイツをちゃんと椅子に座らせると俺は鞄を足元に置いて話を聞く体勢をとった。

 

 

 

 

 

「で、何があったわけ?」

「・・・・フラれた。」

「はあ?」

「だから彼氏にまたフラれたっつってんだから二度も虚しい台詞を言わすなこのデブチンがぁあ!!」

「ちょ、逆切れすんなら帰れよお前!!」

 

 

 

 

 

暴れ出そうとするを押さえ付けると俺は隅で傍観していたジャッカルに助けを求めた。

初めこそは気付かないフリしていたジャッカルだけどあまりのの凄まじさに渋々重い腰を浮かして立ち上がった。

 

 

 

 

 

「思ってたのと随分違ったって言われてフラれた・・・今日。」

「まあそうなるだろうな。」

「同意してないで慰めろ。ってか私まだ何も言ってないし普通だったのにどうして!?しかも付き合って五日目だよ!?なして!?」

 

 

 

 

 

・・・五日かよ。

最短記録じゃんおめでとう。

だけど口にだしたらまた暴れ出しそうだからこれは心の中だけの言葉にしておく。

そういや今のの(元)彼氏は野球部の大輔君だったっけ?

あれだけ惚気できるほどラブラブだったのに急に態度を返したように別れるもんなんか?

俺は顎に手をあてて少し考える素振りを見せた。

 

 

 

 

 

そしてすぐに的確な答えは出てきた。

 

 

 

 

 

(今度は何したんだ仁王・・・!!)

 

「何よ、どうしたのブン太?」

「(ハッ!)え、や、別に・・・ってかそれでまた赤也誘ってゲームなわけ?」

「違うっスよー。ホントどうにかしてくださいよ。部活サボって一緒にホテル行こうって・・・」

「ほ、ホテル!?」

「のバイキングね。はやとちりすんなよ思春期ボーイ。」

「(思春期ボーイ・・・。)それならブン太サンでしょ?っつったら俺じゃないとヤダ死ぬとか言い出して・・・マジしんどいっス。」

「しんどい言うな。切原少年。」

 

 

 

 

 

着替え終わった赤也に足蹴を食らわす。

女が足技使うなっつーの。

パンツ見えてんぞコラ。

・・・今日は黒か。

 

 

 

 

 

「だって食いたいんだもん!食べ放題だよ食・べ・ほ!」

「俺行きてえ。」

「却下!」

「即答すんな!何でだよ!」

「だってブン太と行ったってつまんないもん!赤也がいいー!」

 

 

 

 

 

赤也にべっとり抱き着くに赤也は心底ウザそうな表情を浮かべる。

ちょ、そろそろ放しとかねえと面倒なことになりそうだな。

万が一、赤也が赤目になって相手にキレたりしたら・・・

やべ、面白そう。

 

 

 

 

 

「では私がご一緒しましょうか?」

「え?」

 

 

 

 

 

振り返ると今来たばかりの柳生が眼鏡のフレームを上げながら言った。

え、何!?

柳生とが二人で食べ放題!?

ええ!?想像できねえんだけど!

は少し目を瞬かせてそして嬉しそうにへらりと笑った。

 

 

 

 

 

「部活はいいの?」

「今足首を痛めてるのでどの道部活はできないのですよ。」

「そうなの?大丈夫?」

「はい。ですから私ならお相手できますが・・・どうでしょう。」

 

 

 

 

 

落ち着いた口調で話す柳生に、何故だか柳の目が光った。  ような気がした。

・・・・あれ?

そういや足の怪我って・・・

 

 

 

 

 

「じゃあ行こっか柳生君!私靴履き替えてくるから校門で待ち合わせね!」

「はい。お待ちしてます。」

 

 

 

 

 

軽い足取りで音痴な鼻歌をうたいながら部室を出て行ったを確認し、

柳生はやれやれと言った感じにその場に座り込んでズボンの裾をめくる。

確かにそこはしっかりとテーピングが巻かれていて少し腫れていた。

でもそれはおかしい。

だって足首を痛めてたのって確か・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんスか仁王先輩・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤也の呆れた声に柳生、もとい仁王が顔を上げる。

テーピングを足から取り、黙って柳が差し出した新しいテーピングを貼り直す。

 

 

 

 

 

「じゃけん。そうゆうことであとはよろしく。」

「真田に何て言やあいいんだ?俺、殴られるのはもう嫌だぜ。」

「ジャッカルはええよ。参謀がうまく言っといてくれるじゃろ?」

「病院とだけ言っておいてやる。今回だけだからな。」

 

 

 

 

 

溜め息混じりに柳は言う。

え、何で許すの?

普通そこで止めねえの?

やっぱ怪我してるから?

え?ズルくねえ?

 

 

 

 

 

「だからって何で柳生先輩になる必要が・・・」

「俺にあんま好かれてないから。」

 

 

 

 

 

丸井と一緒。そう呟いて眼鏡を外す。

斜め分けした髪をくしゃくしゃ解して立ち上がった。

テーピングのゴミをごみ箱に投げ捨てて鞄を背負い直す。

そして俺を一目見て、小さく口元に笑みを浮かべて仁王は出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・バイキングのあと、何かありそっスね。仁王先輩と行くと。」

「・・・・(ハッ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このあと、仁王の思惑通りに事が進んだのかは今の時点で俺は何も知らない。

そもそもちゃんとバイキングへ行けたのかすら俺達には想像もつかなかった。

 

 

 

 

 

ただこのあと、仁王が向かった校門の方からの叫び声が聞こえたのは言うまでもない。