I WANNA BE ・・・3
I love you. But this is secret.
一、二年同じクラスだったそいつは今は違って隣のクラス。
何だろう。
俺ひとりだけがのけ者にされたみてえで少し寂しかった。
と仁王と、俺も三年間同じクラスがよかったな。
そしたらきっと・・――――
「よ。」
「よ。デブン太!」
「名前の前にデをつけんなっていつも言ってんだろうが!!」
「イテッ!」
持っていた教科書の角で容赦なく頭を叩く。
は恨めしそうに俺を見上げると「呪ってやる。」と小さく呟いた。
どーせできっこないから相手にはしない。
これが幸村君の台詞なら俺は土下座してでも謝ってただろうけどな。
「何しに来たの?用がないならさっさと自分の教室帰っちまえ。」
「用もねえのに来るかよ。こんな野獣がいる教室なんざ。」
「ちょっと。野獣って何?誰?もしかしてあたし!?」
「何吠えてんのお前。」
「締め上げるわよ。で、何しにきたわけ?あ、さては何か貰いにきたんでしょ!?ざーんねーんでーしたー!さっき全部エンゼルパイ食べちゃったもんね!」
「はあ!?ズルイぞお前!少しは残しとけ・・―――って違えよ。仁王に用あって来たの。」
そう言って空いていた隣の仁王の席に座る。
借りてた教科書返しにきたんだけどな。
見渡すかぎり仁王は教室にはいないらしい。
はガムを食いだした俺を頬杖をつきながら憎たらしい笑みを浮かべて眺めていた。
「仁王なら今可愛い女の子に呼び出されてお留守です。こりゃまた残念でした。」
「・・・お前マジ可愛くねえな。」
ニシシと笑うを睨み返し、仕方なしに仁王の机の中に教科書をしまう。
入りづらかったけどかまわず無理矢理突っ込んでやった。
「そういやお前また彼氏できたんだって?」
「うん!野球部の大輔君!」
「あー・・・そう。(誰?)」
「もう大輔君たらね!本当優しくてさー!」
最近できたばかりの彼氏の惚気を始める。
前のサッカー部の彼氏と別れて二週間くらいしてからはまた新しい野球部の彼氏ができた。
相手の名は大輔(今知った)。
から告白したわけではなくその大輔って奴からに告白したらしい。
「お前ころころ男変えんなよなー。何か見てて軽い。」
「アンタに言われたかないわよ。昨日見た彼女、先週見た彼女と違ったけどー?」
「見てんなよ。覗き。」
「覗いてないし。アンタが勝手にあたしの視界に入ってきたの!ってかホラ!やっぱりブン太も女取っ替え引っ替えじゃん!」
俺はガムを奥歯で数回噛み締めるとそれを一気に膨らませて限界まで息を吹き込んだ。
パンッと割れてまた口の中で噛み締める。
に視線を向ける事なく窓の外を見たままぼそりと俺は呟いた。
「いーんだよ。俺は。」
「何でアンタはよくて私はダメなの?」
「俺本命いるし。」
「はあ?何ソレ初耳、っつか本命いたら余計ダメじゃん。」
呆れた視線が俺に突き刺さる。
そんな視線を気にすることなく俺はただ窓の外の黒い電線にとまる三羽の雀に視線をくれていた。
まるで、俺達みたいだと。
「本命っつっても付き合ってねえから。だから問題ねえし。」
「あ、片思いってやつ!?ぷぷ、ブン太がねえ!」
「お、ハサミ発見。目標人物に向けてロックオン。」
「ちょ、危ない危ない危ない!投げんなよ!」
途端に慌て出して「冗談じゃん!」と膨れっ面になった。
俺はそんなを見てフと笑うと、もう一度窓の外を見つめた。
電線の雀は、三羽から二羽に変わっていて。
まるで本当に自分達を見ているみたいで少し胸が窮屈になった。
「(おーい、俺の雀は何処行った?)だから今の彼女は暇潰し。」
「サーイテー。」
「うるせ。何とでも言え。」
「―――・・ねえ、その本命の子には告らないの?好きだって言えば話早いじゃん。」
アンタなら簡単に落とせるでしょ?と首を傾げて聞いてくるに俺は目を瞬かせて口をつぐんだ。
「言わない。」
「え、何で?」
「そいつにはさ、俺よりもっとそいつのことを好きな奴がいてさ。そいつが告るまで俺は何も言わないし言えねえんだわ。」
君と、俺と、アイツで。
複雑にできたトライアングル。
この均等に保たれた関係を俺は自分から壊すことなどしたくない。
臆病だと言われたってかまわない。
俺よりアイツのが君を好きで。
アイツより俺のが友情を大切にしている。
そして君は今日も。
何も知らないままこの時を生きていくんだな。
「ふーん。その子は愛されてるんだね〜。幸せ者なんだね〜。」
「そうだな。ま、アホで馬鹿でどうしようもない奴なんだけど。そこが可愛いっつーか落ち着くっつーか・・・」
「へー、変な趣味・・―――ギャーごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
にハサミを投げ付けてもう一度、気になって窓の外を見つめると、
そこにはもう鳥なんて何処にもとまってなんていなかった。
三年目、俺もこのクラスになってたら。
そしたらきっとアイツなんて関係なしに君を掻っ攫っていけたのに。