I WANNA BE ・・・2

     I love you. But this is secret.

 

 

 

 

朝、グランドを走り終えた俺にブン太サンが言った。

 

 

 

 

 

「おい赤也。お前知ってた?彼氏と別れたんだって。」

 

 

 

 

 

先輩。

彼女は俺の先輩だけど特に何の繋がりもないゲームを愛するという趣味が一緒なだけのただの先輩。

仁王先輩と先輩が仲良くなければ俺はたぶんゲームを一緒にすることすらできなかっただろう本当それだけの繋がり。

彼女にはサッカー部の彼氏がいた。

正直言って彼女はモテる。

というか顔がいいから男受けはいい。

(中身に問題あるけどね。いや、ただちょっとガサツと言うか・・・)

 

 

 

 

 

「お前のせいだよお・ま・え!」

「は?え、俺っスか!?」

 

 

 

 

 

焦る焦る焦る。

別れた原因が俺だと言われて全く覚えがないもんだからさらに焦る。

何故!?

 

 

 

 

 

「や、別れたのは俺としてもラッキーですけど・・・原因が俺と言われちゃちょっと複雑っス。」

「ラッキーてお前なあ、人の不幸を喜ぶな馬鹿。」

「イテッ!」

 

 

 

 

 

頭を殴られて俺はブン太サンを睨み上げる。

すると「睨んでんじゃねえよ!」とさらにもう一発お見舞いされた。

 

 

 

 

 

「お前とが二人で泊まったりしてんのバレたんだと。それが原因。」

「バレたって・・・別に隠してねえっス。」

「相手は知らなかったんだろぃ?っつか彼氏いんのにアイツもお前泊めたりすんなよな〜。」

「まあ先輩っスから。」

 

 

 

 

 

前に一度聞いたことがあった。

初めて泊まることが決まった日。

先輩は笑って『いやー女の子で格ゲーなんてオールでしてくれる友達いないからさー。』と言った。

まあそれもそうだと思いながらも本当に先輩はゲームが上手くて結構テクってる俺でもそうそう勝てはしない。

だから俺も先輩とゲームすんのは楽しくて、ちょーっと彼氏サンには悪いけどなかなか先輩とのゲームを止められない。

それに俺、ひそかに先輩狙ってたりするし。

まあ自分の気持ちに気付いたのは最近だけど。

 

 

 

 

 

「で、その先輩は?落ち込んでんスか?」

「んー、喧嘩別れみたいになったらしくて今教室で仁王が慰めてる?」

「ふーん、仁王先輩ねえ・・・。」

「あ、おい!赤也!?」

 

 

 

 

 

制服に着替え終えた俺はさっさと鞄を担いで三年の教室に向かった。

うしろからブン太サンが「何しに行くんだよ。」なんて言いながらついてくる。

朝早く誰もいない教室が見えてきたところで仁王先輩と先輩の姿をその中に確認した。

 

 

 

 

 

「何アイツ!心狭くない!?こっちから言わせりゃお前がゲームしてくれないんだろって感じだと思わない!?」

「・・・そやね。」

「あーだったらお前がゲームの相手しろって話じゃん!ホント何アイツ死ね!」

「・・・、死ねは言い過ぎ。」

 

 

 

 

 

どう見ても慰めてるというよりは愚痴を聞いているっていう状況だった。

(ああだからさっきブン太サン疑問系だったんだ。)

相当いらついているみたいで声は大きく机をバシバシ叩いて叫んでいる。

俺は中に入ることはせずにただ 突っ立って中を見ていた。

 

 

 

 

 

「ま、男はアイツだけじゃなか。もっと心の広い理解のある奴と付き合えば?」

「そうする!もうあんな奴のことはすっぱり忘れることにする!」

「それがよかよ。」

 

 

 

 

 

こっちをちらりと見て立ち上がる仁王先輩を不思議そうに見上げながら

先輩もようやく俺とブン太サンに見られていたことに気付く。

俺を見た途端目を輝かせてこっちに向かって走ってくる先輩はまるで犬のようで。

そのあとを仁王先輩は怠そうな足取りで両手をポケットに突っ込んで歩いて来た。

 

 

 

 

 

「赤也!今日オールで私に格ゲー付き合って!」

「えーついこの間したばっかじゃないっスか!まだ一週間しか経ってないっスよ?」

「いいから!明日部活休みでしょ!?つべこべ言わずに私に付き合いなさい!家行くからね!」

「へいへい。」

 

 

 

 

 

呆れたように気のない返事を返しながらも内心は嬉しい。

俺を頼ってくれるってのが。

やっぱり先輩も付き合ってた以上はあの彼氏(あ、元か。)サンが好きだっただけに悲しいのかな。

なんて思うと一日くらいならゲーム漬けにして気を晴らしてやってもいいかな。とも思う。

 

 

 

 

 

「それにしても何でまた急にバレたのかなー。」

 

 

 

 

 

なんて不思議そうに言い残して軽やかに教室を出て行った先輩の背中をしばらく眺めて

俺も先輩達に別れの挨拶を交わすと自分の教室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あの話、バラしたのお前だろ仁王。」

「・・・・プリッ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よってこの二人の会話は耳に入ってくることはなかった。