I WANNA BE ・・・1

     I love you. But this is secret.

 

 

 

 

三年間、仁王雅治と同じクラスで何故かいつも席が近い少し変わった女子生徒がいる。

初めこそは当事者達も他人行事であったが、時が経つにつれ、親密度は上がっていく一方。

次第に彼を訪ねてやってくるの彼の部活仲間とも仲良くなり、今じゃ彼女も噂の一人。

 

 

 

 

 

彼女の名は

 

 

 

 

 

彼氏(現サッカー部)持ち。

顔は可愛いが可哀相なことに中身が変、というより常識はずれ。

これはそんな彼女にひそかに恋心を抱いている仁王君とそれに全く気付いていないさんの日々騒がしくも切ない片思い奮闘記。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ帰りにコンビニ寄って〜お菓子買って〜で、今日は先輩の家でいいっスか!?」

「うん!今日は寝かさないよ赤也。」

「先輩だって。今日こそは泣かせますから♪」

 

 

 

 

 

丸井と二人肩を並べて教室に入ると、この教室にそぐわない明るい後輩の声と怪しい会話が耳に飛び込んで来た。

顔を見合わせ、目的の人物ふたりの席へと近寄ると

さらに聞き捨てのならない発言が大きな声で後輩の口から発せられる。

 

 

 

 

 

「でも本当先輩うまいからな〜。俺何回やっても先輩には敵わないっスよ!」

「ははは。あたしは君より多くの経験を積んでるからね。当然だよ。」

「一年しか違わないじゃないっスか!一年も違えばやっぱテクも違うんスかー!?」

「赤也!」

 

 

 

 

 

我慢できなくなったらしい丸井が叫ぶと、赤也とはほぼ同時に目を丸くして振り向いた。

仁王はの横にある自分の席に座って二人をじっと見つめる。

 

 

 

 

 

「何の話だよ!」

「何って・・・それは・・・」

 

 

 

 

 

赤也がちらりとの様子を伺う。

は気にする事なく不機嫌そうに若干頬を染めた丸井を不思議そうな目で見上げて口を開いた。

 

 

 

 

 

「今日あたしん家で行われる赤也とお泊り計画、の話。」

「お、お泊り!?」

「うん。」

 

 

 

 

 

さらに頬を染めて眉をひそめる丸井にさらりと返事を返す

そのお隣りでは平然としている仁王も見かけとは違って内心はかなりおもしろくない。

丸井の焦っている意味に気付いた赤也が「あ。」と声を上げて可笑しそうに笑い出した。

 

 

 

 

 

「違うっスよブン太サン!ゲームですってゲーム!」

「は?ゲーム?!」

「ウィッス!」

「ゲーマーなあたしと赤也はオールナイトゲーム仲間なんでーす!ね!」

「ね!」

 

 

 

 

 

首をちょこんと曲げて笑うに続いて赤也も首を曲げる。

丸井は目を瞬かせながら間抜けにも口を開けたまま二人を呆然と見下していた。

聞けば二人は大好きな格ゲーをオールでやるらしい。

今までにも新作がでるたびに赤也か、どちらかの家で度々オールでやっていたという。

初耳だ。

二人は知らないうちに自分達より仲が良さそうなこの二人に妙な苛立ちを覚えた。

 

 

 

 

 

「・・・・俺も行く。」

「え、仁王できんの?格ゲー。」

「できる。」

「マジっスか!?聞いたことねえっスよ?!っつか仁王先輩がゲーム!?」

「失礼じゃな。俺だってゲームくらいする。」

 

 

 

 

 

絶対嘘だと思いながらも仁王のことを考慮し、赤也は「なら別にいっスよ俺は。」と言ってに同意を求めた。

も別に誰が何人増えようが、格ゲーができたらそれでよかったので仁王に大きく宣戦布告しながら自分の勝利を疑うことなく嘲笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――・・そしてその夜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うりゃぁああ!」

「ちょ、先輩タンマ!あ、ああ!」

「うっしゃ25勝目!」

「ちっきしょーまた負けた!!」

 

 

 

 

 

ガッツポーズをキメるの隣でコントローラを投げた赤也はそのまま後ろへ倒れる。

それを尻目には振り返ってここに来てからずっと後ろのベッドにもたれ掛かってコンビニで買った雑誌を読んでいる仁王の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

「さて、お手並み拝見といきましょうか仁王さん?」

 

 

 

 

 

やれやれ。

仁王は雑誌をベッドの上に置くと立ち上がり、先ほどまで赤也が使用していたの横に転がったコントローラを手に取り、口を上げてニヤリと笑う。

いつバレるか。

画面には― FIGHT ―という文字が表示され、それぞれのキャラが動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、何コレ超弱い・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、その一戦で仁王はコントローラを握ることはなかった。