i Am a caPtivE oF loVe

 

 

 

 

 

「おはよ、!」

「おはようさん。」

 

 

 

朝練が終わって教室に入って来た丸井と仁王がクラスメートであるに挨拶を交わす。

 

 

 

「おはよ、丸井君!…仁王君!」

 

 

 

明らかに今付け加えたであろう仁王の名前。

当然には丸井しか見えていなかったのが、仁王が挨拶した声を聞いて仁王の存在に気付いたのだ。

そんなことには全く気付くことなく丸井はご機嫌に、少し離れた自分の席へと戻った。

だが仁王はまだな席の前に立ち止まり、不機嫌そうな何とも言えない表情を浮かべている。

 

 

 

「ええ加減そのモロばれな態度治さんとバレるのも時間の問題ぜよ。」

「余計なお・世・話! しょうがないじゃん視界に入らなかったんだからっ!」

「本人前にしてそれを言うな…。 頼むから丸井だけの世界で見んともうちと視野を広げんしゃい。」

「失礼な、ちゃんと見てるよー。 ま、丸井君は必ずと言っていいほど常時視界にロックオンしてるけどねっ!」

「…わけわからん。」

 

 

 

親指を立ててくいくいしているに哀れんだ視線を向ける。

そう言わずもがな、このクラスメート、丸井にべた惚れ。

しかも重症気味。

誰かが止めてやらないとそろそろストーカーになり兼ねない。

いや、もう手遅れかもしれないが。

とにかく変態だ。

 

 

 

「丸井のどこにそこまで惚れる要素があるのか俺にはわからん。」

「私は仁王君のがわからん。」

「なら俺はお前さんの思考回路がわからんよ。」

「なら私はアンタの存在価値がわかんないです。」

「…お前、シメるぞ。」

「その尾っぽ引っこ抜くわよ。」

 

 

 

相変わらず丸井の前とじゃ態度が変わる。

何と言うか…何を言うにしても刺を含んでいる気がする。

 

 

 

「つーか正直のところ、お前さんは丸井のどこが好きなんじゃ?」

「え、顔。」

 

 

 

・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「顔、だけ?」

「あったりまえじゃん! 顔から始まって全てが良く見えるのよ!」

「何じゃその顔良ければ全てカバーできるみたいな言い方は…。」

「みたいじゃなくて出来るのよ。」

「できんよ、何ぬかすかこのアマ。」

「できるよ! いい、よく考えて見なさい仁王雅治。」

「…何じゃ。」

 

 

 

人差し指を立てて真剣な顔つきに変わるを見て、仕方なく仁王も話を訊いてやる体勢をとる。

それを確認しては満足げに話し始めた。

 

 

 

「もしある女子がドジ踏んで誰でもいいから男子のタオルで顔を拭いてしまいます。」

「どうやったらそんなシチュエーションになるんかそこ説明抜けとるよ。」

「どうでもいいから端折ったの! とにかく間違えてタオル使っちゃったの! いい、使ったの!!」

「あーはいはい、わかったからどうぞ。」

 

 

 

話を折られたことに少々怒りを露にしたを適当に宥めて話をすすめる。

 

 

 

「するとね、その男子は『あ、』て思うでしょ。」

「まあ、そうじゃの。」

「その時その女子が『ごめん使っちゃった!洗って返すよ!』って言ったとします。」

「どうでもええけどその台詞の部分だけ声変えんのやめんしゃい。 気持ち悪かよ。」

「死ね! えっと、それでね、その女子の顔が不細工だったら『う…』って思うでしょ誰でも。」

「えげつないこと言いよるのお前さん。」

「うるさいなさっきから! 黙って人の話訊けないのかアンタは!」

 

 

 

バンバンと机を叩いて怒る

どうやら先ほどから話を折られることに苛々していたらしい。

面倒だと感じた仁王は頭をぽりぽり掻きながら誤魔化すように「で?」と話の続きを尋ねる。

もそれに気づいてはいたが、渋々といった感じに話を続けた。

 

 

 

「…でもその女子が可愛かったら得した気分になるでしょ。 『お、』みたいな…」

「別に…。」

「思うのよ普通は! それが男女逆転の場合でも同様! つまり顔が言い人は全てに置いてカバーできる!」

「うーん、あまり説得力のない話やったの。 まあええけど…。」

「なんで!? 得してんじゃん! 顔がよければ大体のことは許してもらえるんだよ!?」

「…はいはい、そういうことでええけど。」

 

 

 

段々と話しているのが疲れてきた仁王が早く自分の席に戻りたそうにチラチラと視線を泳がせている。

視線の先には自分の後ろの席である丸井が自然と入ってくる。

彼は今朝コンビニで買ってきたメロンパンを片手に携帯を弄っていたが、

 

 

 

(何じゃ、一瞬殺気が…)

「どうしたの、仁王君?」

「いや、何でもなか。 ちょっと風邪でも引いたんかの…」

「えーうつさないでよ! 貰い風邪って一番ムカつくから!」

「ムカつくって何じゃ。 しかもそんなあからさまに椅子後ろに引きなさんな。 失礼じゃな。」

「だって自分で引いたなら諦めつくけど、人にうつされて風邪引いて学校来れなくなったらやりきれないじゃん。 来るな病原菌。」

 

 

 

ポケットに手を突っ込んだままの体勢で近寄る仁王には顔を歪めて、

これ以上椅子は後ろへ下がれないので仕方なく体を仰け反る。

 

 

 

「ほう、そんなに学校に来たいんか。 意外じゃの。」

「だって丸井君に会えなくなっちゃうじゃんか考えたらわかるでしょバーカ。」

「…その減らず口このまま塞ぐぞ。」

「ひぃ! 変態!」

 

 

 

それだけはお前に言われたくないと、仁王は急接近していた体をから遠ざける。

は助かったと言わんばかりに仰け反らせていた体を起こした。

 

 

 

「とにかく! 私と丸井君の邪魔をしたらいくら仁王君でも許さないからね!」

「邪魔も何もお前さんの一方通行の恋のくせして。」

「てめえ殺してやる! お前の目は節穴か! いつも何見てんだその目は飾りか!?」

「……朝からようそんなハイテンションでおれるの。 尊敬するぜよ。」

「人の話訊けよ!」

 

 

 

キャンキャン吠えてるを無視してさっさと自分の席に戻る仁王。

後ろの席の丸井がその気配に気づいて顔を上げた。

 

 

 

「なんだよ、いつまでと喋ってんだよ。」

「……不本意ながらに首突っ込んでしもたんじゃ。」

「それにしては結構盛り上がってたじゃん。」

「ああ、ちと丸井の話で…」

 

 

 

あ、と言葉を止める。

しまったつい口が滑ってしまったと仁王は舌打ちしたが、まあ言ってしまったものは仕方がないと

特に隠す素振りも見せずにそのまま話を続けることにした。

しかしさっきまでちょっと不機嫌気味、というよりは拗ねた感じだった丸井の表情が

仁王の言葉を訊いて途端にぱあっと輝きだした…ように見えた。

 

 

 

「俺の話ってな、何の話!?」

「え、何って…え?」

「何!? 何て言ってたんだよ!」

 

 

 

さっきとは打って変わってちょっと浮かれているように聞こえる丸井の声。

仁王の顔色はサッと青く変わり、背中にも妙な汗を掻き、嫌な予感が頭を過ぎった。

 

 

 

「………まさか、丸井…」

「あ? 何?」

 

 

 

この目、知ってる。

このウキウキした輝きを放った目、さっきもずっと見てた。

そう忘れるはずがない。

 

 

 

これは恋する人間の目だ…。

 

 

 

のこと…」

「!、なに今更なこと言ってんだよ。 なに、仁王のくせに知らなかったとか言わねえだろぃ?」

「あ、ああ…まあな。」

「で、何て言ってたんだよ早く教えろよー。」

 

 

 

引き攣った顔のまま、二人が上手く行かないことを切に願う仁王の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2007.01.30 執筆

彼方ちゃん二日遅れのハッピーバースデー!汗

ごめんね遅くなってそして間違えてて…^_^;

とにかくおめでとう! これからもブン太好きーな彼方ちゃんでいてください!

 

背景素材は FIELD です!    恋愛ゴッコ@ユギリ