ただ何となく。

君の存在はまさに空気のようで

必死に手を伸ばしてみても掴みどころなんてどこにもなかった。

 

 

 

 

 

-kurenai-

 

 

 

 

 

「よっ。」

 

 

 

 

 

にっこり笑って手を上げて俺に今日三度目の挨拶を交わしに来たのはジャージを片手に持った赤い髪の男。

そいつは口をくちゃくちゃと動かしてガムを噛んでいるかと思うと、風に乗って香ってくるその香りはストロベリーとみた。

甘ったるいその匂いに鼻を擽られ、少し眉をしかめる。

妙に笑顔な目の前の男、丸井ブン太に怪訝の表情を浮かべながら持っていたラケットをベンチの上に置いて

首からかけていたタオルで滴り落ちる汗を乱暴に拭いた。

 

 

 

 

 

「遅かったの。」

「おう、俺今日は委員会だったんだわ。」

「へー。」

 

 

 

 

 

特に興味もなく、適当に受け流す。

依然として笑顔の丸井にチラリと視線を向けると、奴はベンチに座ってガットの張りを確かめていた。

何か、違和感を感じる。

 

 

 

 

 

「で、何?」

「え?」

「何か俺に言いたいことでもあるんじゃろ?」

 

 

 

 

 

この妙な雰囲気を纏った丸井に苛立ちを覚えた俺は、臆する事なくさっさとその疑問を取り払おうと尋ねた。

そんな俺を察したのか、丸井からはサッと笑顔が消え、俺を睨むような視線に変わった。

やっぱり、この笑顔の下は敵意剥き出しだったってわけか。

そしてその理由の大体の予想はついている。

丸井の自分への敵意の意味を理解した俺は、途端に優勢な立場に立ったかのような感覚を覚えて口元を上げた。

 

 

 

 

 

「・・・・なあ仁王。」

「何じゃ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前って見かけによらないガキだよな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想してなかった台詞を向けられ、一瞬だけ目を見開く。

丸井は俺に目を合わせずにガットを弄りながら俯いていた。

だから今の俺の驚きの表情も見られていなかったことに少し安堵する。

 

 

 

 

 

「まあ、年齢的にも俺はガキじゃけん。」

「そういうこと言ってんじゃねえよ。わかってるくせに誤魔化すなよ。」

「・・・今日のブンちゃんはやけに突っかかってくるの。何じゃ?言いたいことがあるならはっきり言いんしゃい。」

 

 

 

 

 

俺が言葉とは裏腹に、ちょっと敵意を含んだ冷たい言い方をすると、丸井はぐっと言葉を堪えるように唇を噛んだ。

たぶん、今の俺は自分で思う以上に丸井のことを睨みつけているんだと思う。

 

 

 

 

 

俺がガキだ?

そんなことはわかってる。

どれだけ自分がガキだって別にそんなことはどうでもいい。

どうでもいいくらい、何故かアイツに執着してしまう自分がいるんだ。

 

 

 

 

 

「じゃあはっきり言ってやるよ。」

「・・・・・・・・・。」

「もう、アイツらの邪魔してやるな。」

 

 

 

 

 

ガタンと音を立ててベンチから立ち上がる。

そして俺の胸倉を掴み上げた。

俺より少し背の小さいはずの丸井が、何故か妙に大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちは、悔しいけどあの二人の間に入っていい人間じゃねえんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った丸井の表情が俺の胸を残酷なまでに抉った。

まるで自分の心情を目の前で見ているかのようで、苦しかった。

改めて言われる頭の何処かではわかっていた言葉。

それを他人の口から言われる悔しさで俺は丸井からそっと目を逸らして平静を保とうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤也が好きなのはちゃん、ちゃんが好きなのは赤也ってわかってんだから諦めも肝心だろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン

 

 

 

 

 

音がして振り返る。

俺と丸井の少し向こうで佇むようにして立っていたのはラケットを手からすべり落とした赤也だった。

 

 

 

 

 

口を半開きにしたまま驚いたように目を見開きながら呆然と俺と丸井を見ている。

落としたラケットは拾わない。

丸井はいまだ俺の胸倉を掴んだ体勢のままそんな赤也を見て黙ってしまった。

 

 

 

 

 

「あ、かや・・・」

「違うっス。」

 

 

 

 

 

しばらくして俯いてしまった赤也に丸井がやっとのことで声をかける。

赤也から返ってきた返事はハッキリしていて、でも何処か震えているように、かすれているようにも聞こえた。

そしてゆっくりと顔を上げて俺と丸井の二人を睨みつけるようにして見据えた。

 

 

 

 

 

「俺は朱音先輩の彼氏、サンは仁王先輩の彼女。それ以外の何でもないっス。」

 

 

 

 

 

そうだ。

確かに現時点ではそれが事実。

でも赤也のそんな当たり前の台詞も、どこか自分に言い聞かせているような、そんな気がした。

認めていないけれど、それが事実だからそう思わなくてはいけない。そんなふうに。

 

 

 

 

 

そもそも、どうして俺はという女に興味を持ったのだろうか。

初めは赤也が自分から初めて思いを寄せた女ということで少し興味を持った程度だったんだ。

そう、赤也が自分の気持ちを自分で認めなかったからちょっとからかってやろうと思ってちょっかいを出した。

だけど想像以上に自分がという女にはまってしまって、なかなか自分の気持ちに気づかない赤也とに苛立ちを覚え、

気がつけば俺がと付き合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤也が一度でもいいから自分の気持ちを認めれば、俺は諦めようと思っていたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうじゃの。は俺の彼女。赤也のことが好きなんてありえんよ。」

「仁王!!!」

「じゃけど、赤也がのことを好きってのはもっとありえんね。」

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

丸井が胸倉を掴んだままだった手に再び力を込めて俺に制止を訴えかける。

だけどそんなことはお構いなしに俺は赤也に向けて鋭く冷え切った視線を送った。

赤也の俺を睨む目が一層強くなった気がした。

 

 

 

 

 

「俺だって初めはのことなんてお遊び程度じゃったんよ。」

「おい仁王ってば!!」

「赤也の反応を見るのが楽しくての。ちょっかい出して遊んどった。」

 

 

 

 

 

赤也の握り締める拳に力が入って俺を睨む目に抑えきれない敵意が篭った。

俺はそれを見てさらに口の端を上げる。

 

 

 

 

 

そうだ。そんな顔をもっとすればいい。

悔しがれ。

悔しがってもっともっと後悔すればいい。

自分の気持ちに気づいた時には大切な女は自分じゃない奴の腕の中。

 

 

 

 

 

そして俺は、そんな赤也の顔を見た後に本当は女を返してやろうと思っていたんだ。

だけど、いつの間にか手放したくなくなっていた。

誤算だった。

だけど悪いのは赤也だ。

自分の気持ちになかなか素直にならずに、いつまでたっても気づかないままで彼女を苦しめていた。

だから俺も、本気になってしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ赤也。お前さんは一体誰を好いとお?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは最後の俺がお前にくれてやる賭け。

本気になってしまった俺からお前へのささやかな侘び。

いい加減。もう、俺を苛立たせるのは止してくれ。

意地を張ったり、周りを巻き込んだりするのはお前が、俺が、あの子がガキだから。

だったらこの中の誰かがそれを乗り越えなければずっと俺達はグルグル同じところを廻り続ける一方だ。

 

 

 

 

 

――――― お前って見かけによらないガキだよな。

 

 

 

 

 

わかってる。

今までの自分がどれだけ大人気ないかくらい。

だから一度だけ、一度だけ俺が大人になって立ち止まって動けないお前に道標をくれてやる。

選べ。

お前がどちらに向かうかで俺の進む道も変わってしまう。

そんな大事な選択権をお前にくれてやるから、選べ。

 

 

 

 

 

「お前達何をしている!!!休憩時間はとっくに終わってるんだぞ!!!」

 

 

 

 

 

はっとして顔を上げると、少し向こうのコートから真田が声を張り上げて俺達を怒鳴りつけていた。

赤也も俺も丸井も驚いたように体を硬直させる。

赤也にちらりと視線を向けると、案の定戸惑いをあわらにしてあちらこちらに目を泳がせていた。

 

 

 

 

 

その時だった。

誰か、何処かで見たことがあるような女が部外者立ち入り禁止のコート内に飛び込むように入って来たのは

 

 

 

 

 

「赤也!!」

「あ、杏璃!?」

 

 

 

 

 

焦ったように肩を上下に揺らした杏璃と呼ばれた女が怒鳴る真田もお構いなしに赤也に駆け寄る。

コート内にいる部員達は何だ何だと好奇心の目で俺達四人にあらゆるところから視線を這わせていた。

 

 

 

 

 

「赤也大変なの!!」

「な、何が・・・」

さんが、大変なの!!」

 

 

 

 

 

赤也の表情が一変して困惑の表情に変わる。

の名前が出てきたことによって、俺と丸井も真剣に二人の会話に聞き耳を立てていた。

赤也は、眉間に皺を寄せて杏璃という女から目を逸らした。

 

 

 

 

 

「何で俺に言いにくるわけ?仁王先輩に言えよ。」

「ッ、そうだけど・・・違うの!!アンタ、赤也じゃないとダメなのよ!!」

「んだよそれ!意味わかんねえし!!」

「意味わかんなくったっていい!!とにかくさんが危ないの!!早く助けに行ってあげて!!」

 

 

 

 

 

赤也の肩を掴んで揺さぶる。

その女の顔は真剣で、どこか本気で危ないんじゃないかって不安を掻き立てるようなくらい必死だった。

この女は赤也の元彼女でを遠足の時怪我を負わせた女だろう。

だけどどうしてこの女がの身の危険をこんなにも必死に、恥を忍んで自分をふったはずの赤也に言いに来たのだろうか。

そんなことを考えながら俺はただ呆然と二人のやりとりから目を離せずに見ていた。

 

 

 

 

 

「・・・別に、サンが危なくったって俺が行く義理なんてねえし。」

 

 

 

 

 

コートに響く乾いた音。

俺も、赤也も、丸井も、

ここにいた全ての人間が目を疑うかのように赤也の頬を打った女をまじまじと見つめた。

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねえよ!!赤也はさんが好きなんでしょ!?

どうして何時までもそんな中途半端なところで戸惑ってるの!?そのせいで周りは振り回されてるってどうして気づかないのよ!!」

「・・・・っ」

「アンタにふられた私は何!?アンタのさんに対する好意を見せ付けられて嫉妬した女達がさんを虐めているのはどうして!?

だけどそれを助けてもらえないさんは!?中途半端な気持ちで付き合ってるマネージャーさんは!?一体どんな気持ちかわかるのアンタ!!!」

 

 

 

 

 

赤也が言葉につまって顔を歪ませる。

一気に叫んだからか、荒々しく息を整えながら女は涙を流して唇を食いしばった。

 

 

 

 

 

悔しかったんだろう。

好きだった男にふられて。

その原因となった女は赤也の意地のせいで全く別の男と付き合った。

そのうえ赤也も全く違う女と付き合ってしまう始末。

 

 

 

 

 

「いい加減、自分のことばっかり考えてないで周りの気持ちも考えてよ!!」

 

 

 

 

 

最後にそう叫んだ女の言葉に、俺は胸を締め付けられた。

まるで俺にそう言っているかのような気がして。

どきりと胸が鳴った。

 

 

 

 

 

さんは・・きっともうボロボロになっちゃう・・・・」

「・・・・・・・・。」

「全部、知っちゃったら・・・っ・・・・」

 

 

 

 

 

その場に泣き崩れた女をただ虚ろな瞳で見つめる赤也。

たぶん頭の整理がついて行っていないのだろう。

そんな二人に丸井が一歩、また一歩と歩み寄る。

二人の前で足を止め、そしてその女の頭をポンポンと優しく撫でて赤也に向かって持っていたジャージを突き出した。

 

 

 

 

 

「赤也、行くのか。行かないのか?」

「・・・・そのジャージ・・・」

ちゃんから赤也に返してくれって頼まれたんだよ。」

「何で俺のジャージって知ってッ・・・・!!」

 

 

 

 

 

「もう、ちゃんはお前と違って気づいてんだよ。」

 

 

 

 

 

じっと見つめる丸井の大きな目に、赤也がぐっと言葉を呑んだ。

震える手をそっと伸ばしジャージを掴む。

 

 

 

 

 

「・・・・杏璃、サンは?」

「え?」

サンはどうしたんだって聞いてんだよ。」

 

 

 

 

 

赤也が掠れた声で女を見ずにそう言う。

ジャージを握り締めるその手にギュッと力を込めて唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだまだ尻の青いガキな俺達は、

 

自分が傷つくのが怖くて、

 

周りのことなんてちっとも考えずに、

 

自分のことだけを考えてただがむしゃらに知らない道を突っ走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素直になることが何だか怖くて、

 

意地を張ることで自分を守った気でいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きなはずの相手

 

傷つけて

 

傷つけて

 

それでも自分を守っていたかった。

 

ガキだから。

 

それを理由に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲りたくないものは、

 

たとえどんなことをしようとも、

 

好きな相手を傷つけようとも、

 

手放そうとはしなかった。

 

ガキだから。

 

それを理由に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、それじゃいつまで経っても大人になんてなれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互い知らない道を走ってる。

 

だけどそれぞれが知ってる道を教えてあげたっていいじゃないか。

 

アイツが知ってて

 

俺が知らない道を。

 

俺が知ってて

 

アイツが知らない道を。

 

教え合わないと、出口なんて見つけられるはずがないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは難しいことのようで、簡単。

 

簡単なことのようで、難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいたら張ってしまう意地が、そうさせてはくれない。

 

素直じゃない心が、それを拒絶しようとするから。

 

だけど、

 

それを破ったらあとは簡単。

 

それを破ることが難しいだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「委員会終わって帰ろうとしていたさんに数人の男が近寄ってきて・・・」

 

 

 

 

 

ぽつり

 

ぽつり

 

薄く開かれた口から漏れる言葉に、俺は今すぐにでも駆け出したい衝動を抑えた。

 

 

 

 

 

「この近くにある使われてない工場の倉庫あるでしょ?そこに・・・連れて行かれた。」

 

 

 

 

 

大きく目を見開いた赤也がそれを聞くと同時にジャージを持ったまま走り出そうとしたその肩を真田が掴んで止めた。

赤也は焦る気持ちを抑えながら歪んだ表情で真田を見上げる。

 

 

 

 

 

「部活中だぞ何処へ行くつもりだ赤也。」

「っ副部長!!!」

「そういうことは先生か誰か大人を呼んだほうがいい。お前が行くことではないだろう。」

「おい真田!!」

 

 

 

 

 

丸井が真田の手を赤也から払い除ける。

確かに真田の言うことは一理ある。

だけど違う。

赤也はいかなくてはならない。

それは何故だろう。

たぶん、こうなった原因が赤也だから・・・・

 

 

 

 

 

「真田君!!赤也に行かせてあげて!!」

 

 

 

 

 

コートの入り口からそう叫んだのはマネージャーの仕事をしていたはずの朱音。

ボトルが入った籠を抱えたまま入り口を開けて立っていた。

真田が一瞬隙を見せたその隙に赤也が朱音の立つ入り口に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

「赤也!!!」

「うるせえ!俺は行かなくちゃいけないんスよ!!!」

 

 

 

 

 

真田の怒鳴り声にも負けない赤也の台詞に、真田が思わず押し黙ってしまった。

そして赤也が入り口へと差し掛かった時に少し走るスピードを緩め、マネージャーの隣で立ち止まった。

 

 

 

 

 

「朱音先輩・・・・すんません。」

「いいよ。赤也行って。・・・気休めって、言ったでしょ?」

 

 

 

 

 

苦笑いを浮かべる朱音に赤也少し顔を歪めて「ありがとうございます!」そう叫んで再びコートに背を向け走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤也がいなくなったコートで俺に近付く影一つ。

それは赤い髪をした男だった。

 

 

 

 

 

「よっ仁王。」

 

 

 

 

 

今日四度目の挨拶を交わすこの男に俺は視線を向けることなくポケットに手を突っ込んだ。

だけどそんな俺にお構いなしに肩をポンと叩き、まだ微かに香るストロベリーの匂いを漂わせて俺に苦笑いを含んだ笑顔を向けた。

 

 

 

 

 

「お前、もうこれで諦めついた?」

 

 

 

 

 

赤也の返事なんて聞く必要なんてない。

あの走っていく背中を見たら、それが答えのような気がして、俺は再度返事を求めなかった。

悔しいけれど、あの剣幕の真田に怯むことなく走り去っていった赤也がかっこよく見えたから。

 

 

 

 

 

「・・・・・もともと、俺は本気なんかじゃなかったぜよ?」

 

 

 

 

 

そう、いつもの平静を取り持って答えると、丸井から呆れたような溜め息と乾いた笑いが聞こえてきた。

俺はそんな丸井に背を向けて真田に見つからないようにそっとコートを後にした。

 

 

 

 

 

一人になって、そっと目を閉じる。

頬を撫でる風が生ぬるいような冷たいような、なんともいえない温度で駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊びなんかじゃない。かっこ悪くも自分を見失うほど

 

他の男が好きなお前に惚れてしまった俺は、悔しいけれど本気の恋の苦さを知った。

 

いつかもう一度こんな恋をする日がくるのなら、

 

この恋で手に入れた地図を持って、

 

今度は道を間違えないように恋をしたい ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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