ただ何となく。

君の存在はまさに空気のようで

必死に手を伸ばしてみても掴みどころなんてどこにもなかった。

 

 

 

 

 

-kurenai-

 

 

 

 

 

もどかしい。

自分の気持ちがわからない。

どうすれば、この胸は晴れてくれますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ最近。

あの日から切原君に避けられてる気がする。

避けられてるというよりは嫌われてるって方がしっくりくるかも。

ずっと鋭い目付きで睨まれてるし。

かと思って見てみると目が合った瞬間にそれはもう驚きの速さで逸らされる。

 

 

 

 

 

私、何かした?

やっぱりあの日、仁王先輩といたのが何かいけなかったのかな?

それよりもっと前?

考えれば考えるほどわけわかんなくて、ただ切原君に嫌われているということがものすごく辛かった。

 

 

 

 

 

「あ、教室にノート忘れた。」

「マジ?取ってきなよ。」

「うんそうする。ごめん小百合!先に行ってて!」

「はーい。」

 

 

 

 

 

もうすぐ実験室ってところでノートがないことに気付き、私は教室に取りに帰ることとなった。

机の中からノートを取り出す。

教室は電気が消えていて、もう誰もいなかったのでさっさとノート持って実験室へ行こうとしたその時だった。

 

 

 

 

 

「あ、」

 

 

 

 

 

ドアの前に切原君が立っていて、私と目が合った瞬間目を見開いてまたすぐ逸らし、自分の席へと歩いていった。

どうやら授業の用意を取りに来たみたいだった。

 

 

 

 

 

「・・・・切原君。」

 

 

 

 

 

返事はない。

見向きもしない。

わかっていたけどそれがショックで。

それと同時に切原君に対する苛立ちが沸き上がってきた。

 

 

 

 

 

どうして私がそんな態度とられなきゃなんないのよ。と、怒鳴り付けてやりたい衝動に駆られる。

ブチッと頭の中で何かがキレた音を聞いた。

 

 

 

 

 

「切原赤也!」

「・・・・何だよ。」

 

 

 

 

 

私の怒りを含んだ声に気付いたのか、切原君は眉をしかめて振り返った。

そうよ、何よこの態度の急変は!

そういう扱いするのなら始めから関わらなければよかったじゃん!

そしたら私だってみんなに恨まれることもなかったってのに!

そう思うとまた苛立ちが増して、ギュッと手の平を握りしめて切原君を睨み付けた。

 

 

 

 

 

「一体何なのよアンタは!」

「はあ?何がだよ。」

「ちょっと仲良くなったなって思ったらいきなりそうやって避けたり無視したりするし!ホント何なのよ!」

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

私が容赦なく怒鳴ると、切原君は罰が悪そうに視線を逸らした。

 

 

 

 

 

「・・・・もとはそんなに仲良かったわけでもねえんだし、いいじゃん別に。」

「よくないよ!だったら始めから関わらなければ私はみんなの恨みを買うことだってなかったんだよ!?」

「・・・・それもそうだな。」

 

 

 

 

 

一応は悪いと思っているらしく、低い声でボソリとそう呟いた。

切原君の考えていることが、全くわからない。

全てが謎すぎて、私はどうすればいいのかわからなかった。

 

 

 

 

 

「ねえ、私切原君に何かした?」

「・・・・・。」

「何かしたならハッキリ言ってよ。今のままじゃ私は納得いかない。」

 

 

 

 

 

私がそう言い切ると、何か言いたそうに切原君と目が合った。

この場にそぐわない授業開始のチャイムが鳴り響く。

無言のまま鳴り終わると同時に、シンとした空間が私達を取り巻いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、私の視界は真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――・・んんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感じるのは唇の温かさ。

掴まれた両頬すら、熱を帯びていて熱い。

必死に離れようと肩を押すけどびくともしない。

 

 

 

 

 

(やだ、怖い・・――――!)

 

 

 

 

 

恐怖を感じた。

それと同時に息が苦しくなってくる。

 

 

 

 

 

痛い痛い痛い。

胸が、痛い。

 

 

 

 

 

「・・・ッ最低!」

 

 

 

 

 

唇が離れたと同時に睨み付けてそう言い放った。

切原君はただ苦虫を噛み殺したような表情をして視線を俯かせていた。

 

 

 

 

 

私は授業中だってことも忘れて教室を飛び出した。

走って走って走って。

流れる涙を手で拭って。

こんなので授業に出れるはずもなく、教室に切原君を残し、私は屋上でサボることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、確かめたかっただけ。

触れた唇が、吐息が、俺の頭から離れない。

まだ残るこの感触。

 

 

 

 

 

「――――・・マジかよ。俺、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイツのことが好きなんだ・・――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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