僕たちは、信じていた。
この真実から逃げたくなかった。
「ウッソ何この結果!!」「あー?切原お前、あんまり変わんねえ顔してんなあ。俺なんてちょっとイカつくなってねえ?」
「それは今もでしょ!?そんなことより俺の未来見て下さいよ〜!コレ!酷くないっスか!?」
鑑定結果の書いてある紙を宍戸の顔の前に差し出す。
宍戸は少し後ろにのけ反った。
そう、彼らは今、Pの“TRUE or DIE”に来ているのだ。
宍戸は未来の自分の顔を予想した写真を見て少し不満なご様子。
その隣のベンチで、力尽きたジローがいびきをかいて寝ていた。
「俺の未来は“周りの行動で生死が変わる”ってどういうことなんスか!?俺じゃどーしようもないってこと!?」
「あんま気にすんなよ。俺のなんて“22歳が人生の分岐点”だぜ?アバウト過ぎんだろうが。ま、所詮こんなもんだろ?」
「そうっスけど・・・・・俺なんて生死が関わってるんスよ?
あ、芥川サンのどうだったんだろ!見ちゃいましょうよ!」
寝ているジローの手に握られた紙を抜き取る。
しかしジローはビクともせず、気持ち良さそうに寝息を立てて寝ていた。
よく寝るものだ。
しかもこんなところで。
なのにどうして身長があまり高くならないのだろうか?
疑問に思いながらも切原は鼻歌交じりに四つ折にされた紙を開く。
突如、切原から鼻歌が消えたことに不思議に思い、宍戸は背後から紙を覗いた。
「な、何だよこれ・・・・・“予測不可能”?」
「芥川サンって機械でも予測できないほどの不思議チャンなんスか?この人の将来がちょっと心配っスね。」
「まあな。年下のお前にまで心配されるなんてジローも激ダサだな。」
「だって、どんな神経してたら今こんなところでいびきかいて寝てられるんスか?ありえねえよ。」
こりゃしばらく起きそうにないな。
そう思い、宍戸はジローの頭の隣に腰を下ろした。
今はまだ跡部に連絡は取らないでおこう。
跡部だって楽しんでいるんだ。
できるだけ邪魔はしたくない。
携帯を取り出そうとポケットに入れた手を止めた。
「ちょっと休もうぜ。ジローも寝ちまったしな。10分もして起きなかったら無理矢理叩き起こして行こうぜ。(絶対ぇ起きねえけどな。)」
「・・・・・宍戸サンも苦労してるっスね。ま、俺は別にいいっスよ。その辺てきとうにうろついてるんで時間になったら呼んで下さい。」
「ああ、悪ぃな。館内からは出るなよ?」
「ハイハイ。たぶん自販機辺りにいますんで。じゃ。」
苦笑いながら切原は宍戸に背を向けて歩いて行った。
ジローの寝息を聞きながら、宍戸はもう一度ジローの鑑定結果の紙を見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさかな。」
宍戸の呟きは誰にも聞こえることはなかった。
「ギャァァアアアア!!?」
「ちゃん落ち着いて!これ作り物だから!作り物だからね!?」
洋館に入れば、まず目の前に現れたのは夥しい鎧。
ボロボロで、血液のようなものが所々に付着していた。
不二君が必死に興奮した私を宥める。
もう少しのところで私の意識は飛びかけていた。
それにしてもどうして私はこんなにも可愛いげのない叫び声しかあげれないのだろうか。
つくづく自分が嫌になる。
このゲームのルールはこうだ。
いろいろな仕掛けをされたお化け屋敷の各部屋を回り、いち早く宝を得るというゲーム。
今回のゲームでの宝は、あの謎を解く鍵が入った封筒だ。
まあ、これはメインがお化け屋敷なのでたくさんの部屋に入れば入るほど驚かされるってわけだ。
まず、館に入ったところで階段が右と左に二つある。
天井は吹き抜けだが、階段を上がると、各部屋に繋がるドアが四つ並んでいる。
一階にも、左右の階段に挟まれた部屋のドアが三つ並んでいた。
部屋の中にも隠し扉やその他に繋がる通路があったりするらしい。
係員が言っていた。
「何か生々しいな・・・・。うぇ、壁の血痕なんてご丁寧に変色までしてんじゃん。」
「何だかお化け屋敷に来たというよりは古びた洋館に見学しに来た気分だな。見て、これ本物の蜘蛛の巣に本物の蜘蛛だよ。」
「幸村、触るなよ。」
「ふふ、跡部は真田みたいなことを言うんだな。わかった、触らないよ。」
幸村君、本当に触るつもりだったんだ。
それより真田って誰だろう?
幸村君の学校の人かな?
残念そうに蜘蛛から離れる幸村君の隣で、向日君がまだ壁の血痕に興味津々で見入っていた。
怖くないのかな?
ま、不二君の言う通り作り物なんだし大丈夫だよね!
怖くない怖くない。
暗示をかけて自分を落ち着かせる。
「この柱に刺さってる斧、本物だね。危ないな。」
「ああ、経営者は何を考えとるんじゃか。それにこの斧・・・・相当古いモンだぜ?」
「うん。でもこの柱に付いてる血は偽物みたいだね。・・・・・・・・・・・・この血も偽物だといいんだけど。」
不二君が斧に付着した血を見つめながら呟いた。
仁王君からは返事はない。
二人共、何をそんなに疑ってるのさ!
偽物に決まってるじゃない!
ただでさえ怖いのに、これ以上怖くなるようなことを言わないでほしい。
不二君にいたっては開眼までしている。
怖いってば!目閉じてよ!
「ちゃん、大丈夫?今の話怖かった?ごめんね。気にしないで?」
「う、ううん!大丈夫!不二君とこうして手を繋いでるだけで何とかいけそうだよ!(本当は不二君の方が怖かったなんて言えないや。)」
「そう?よかった。じゃあさっさと行っちゃおうか。」
「うん!」
私と不二君、そして仁王君は、少し先に行ってしまった跡部君達の後を追って階段を上った。
繋いでいる不二君の手が、少し震えているような気がした。