僕たちは、信じていた。



この
真実から逃げたくなかった。































「やっべ、俺今超幸せかも☆」

「はは、俺は今とっても吐きそうだよ丸井クんぷっ・・・・・・・・・・・・・!!」

「ちょ、汚いわ!吐くんやったら俺の方向かんと丸井の方向いて吐いてえや!」

 

 

 

 

 

隣で千石が吐こうが、忍足が怒ってようが、そんなことは全く気にせず、丸井は何も聞いてはいなかった。

ただひたすらケーキを口に詰め込んでいる。

忍足は隣で吐いている千石を見て、自らも吐きたい衝動に駆られた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・俺もう出たい。ケーキの甘い匂いと俺の酸っぱい臭いが混ざり合っ「やめえ。」

 

 

 

 

 

白いテーブルクロスを引いたテーブルの上に、千石はゴツンと音を立てて頭をぶつけた。

忍足が千石の言葉を封じるために、千石を殴ったからだ。

起き上がってこないところからみて、そうとう参っているようだ。

それは忍足に殴られたからなのか、ケーキの匂いからなのかはわからない。

 

 

 

 

 

「まあ、丸井は止めへんかったらいつまでも食い続けてそうやからな。ほな、もうそろそろ出よか。」

「はあ?俺まだ全然いけるぜ!?」

「お前がいけても千石が死んどるわアホ。行くで。」

「ちょ、待てよ!まだ食ってる途中ッ―――――――!!」

 

 

 

 

 

ぐったりした千石を連れてさっさと歩き出す。

そんな忍足の背中を見て、慌てて席を立つが、残ったケーキが惜しい。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・これ、お持ち帰りとか出来ますか?」

「今回は特別ですよ?今準備しますので二、三分お待ち下さい。」

「あ、どうも。」

 

 

 

 

 

近くにいたメイドに尋ねると、クスリと笑って小さな紙パックを持って来てくれた。

出口に視線を向けると、苦笑った二人がこちらを見て待っていてくれていた。

 

 

 

 

 

「けっ、食い物を粗末にしちゃいけねえって小さい頃よく母ちゃんに言われたんだよ!」

 

 

 

 

 

小さく愚痴を漏らしながら、ケーキの入った紙パックを受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「向日君どうしたの!?」

「・・・・・・・・?・・・・・・・・・・うえっぷ。」

「!?」

 

 

 

 

 

不二君と幸村君に挟まれてベンチに座っている向日君。

薄ら顔が青い。

困ったように苦笑う不二君に、背中を摩られながら嘔吐していた。

 

 

 

 

 

「ちょっと向日はね、幸村のお遊びに付き合っちゃってさ。地獄を見てきたところだよ。」

「は?地獄!?幸村君何したの!?」

「・・・・やだなあ、コーヒーカップに乗っただけだよ。も乗るかい?」

 

 

 

 

 

後ろにある可愛らしいコーヒーカップ。

これに乗ったらどうして向日君のようになるのだろうか?

未だ顔色が悪い彼の目は視点が定まっていなかった。

私は一度だけ首を横に振った。

想像したくなかったからだ。

 

 

 

 

 

「遠慮しとくよ。私、命が惜しい気がするんで・・・。」

「残念だな。なら特別に優しくしてあげようと思ったのに。じゃあ仁王はどう?」

 

 

 

 

 

何をだ。

コーヒーカップに優しいもくそもあるのか。

そう思ったけれど口に出すのは惜しんだ。

まだ生きたい。

そう、私の脳が叫んでいたから。

隣の仁王君は表情には出ていないものの、必死に首を横に振っている。

そんなに嫌なんだ。

わかるけど・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「乗ろうよ?」

「嫌じゃ。俺はまだ生きたい。」

「死なないよ。向日も生きてるだろ?」

「・・・・死にかけとる。俺、ああにはなりたくない。代わりに跡部を乗せてあげて?」

「アーン、何寝言をぬかしてやがる。俺様はこんなモンなんかに乗らねえよ。テメェが乗ってこい。」

 

 

 

 

 

仁王君をギロリと睨む。

仁王君は苦笑って「これだけは勘弁。」と呟いた。

不二君が言うには、幸村君と同じカップに乗るとものすごい強烈スピンをかけられるらしく、向日君はそれに酔ったらしい。

不二君はというと、向日君を餌に違うカップへと逃げたそうだ。

なんて酷い人だ。

でも私も同じ立場ならそうしていた気もしなくもない。

ゴメンね。向日君。

 

 

 

 

 

「ねえ、ちゃん達はこれから何処行くの?」

「んー、別に何処も考えてなかったなあ。・・・・・・跡部君仁王君、何処に行く?」

「そうだな。この近くにあるところにでも行くか?」

「それならMの“GHOST house”が近いんじゃないか?俺達も次はそこに行くつもりだったんだけど。一緒にどうだい?」

「はあ!?そうなのか!?俺そんなの聞いてなっ・・・・うぇっぷ。」

「ちょ、向日君汚い!じゃなくて大丈夫!?」

 

 

 

 

 

幸村君の言葉に反応した向日君は・・・・・・・・・・・・・・・吐いた。

私の言葉に頷くと、すかさずトイレに向かって走り去って行ってしまった。

可哀相に。

幸村君とあたるなんて彼はよっぽどくじ運がなかったんだ。

 

 

 

 

 

「お化け系はちょっと・・・私かなり無理だから遠慮しとくよ。」

「そうなのかい?じゃあ行くしかないね。さ、行こうか。」

「はあ!?どうしてそうなるのよ!」

 

 

 

 

 

幸村君はベンチから立ち上がってさっさと歩き出した。

跡部君といい、幸村君といい。

何故、彼らは人が嫌がるところへ行きたがるのか。

不可解だ。

というよりドSじゃないか。

幸村君の後について、今度は仁王君が歩き出した。

ちょっと、アンタもさっきゾンビ嫌いとか何とか言ってたじゃないさ!

何平気な顔して後ついて行ってんのよ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、待て。

奴は“GUNS ZONE”でも全く怖がったりしていなかったじゃないか。

それ以前に、普通に得意げに銃をぶっ放してはいなかったか?

つまり、仁王君はそういった類いは苦手ではない?

嘘ついたの?

何のために!!?

 

 

 

 

 

ちゃん、行こうか?」

「ふ、不二君。・・・・・・・・・・・・・・何なのアイツら!跡部君も仁王君も幸村君について行っちゃったよ!?」

「もうちゃんが何を言おうが彼らには聞こえていないんだろうね。

ここは諦めて僕たちもついて行った方が利口だ。しょうがないよ。行こう?」

「で、でも怖い!私また腰抜けちゃう!」

「(また?)・・・・・・・・・・・・クスッ、じゃあずっと僕の手を握っておけばいいよ。

それでも怖かったら目をつむって?僕が出口まで誘導してあげるから。」

「不二君・・・・!」

 

 

 

 

 

なんて優しい人なんだ。

さっきは酷い人とか思ってごめんなさい。

私と不二君、そしてトイレから帰って来た向日君と三人で“GHOST house”へと向かった。