僕たちは、信じていた。
この真実から逃げたくなかった。
「丸井君やっぱりこっちの方がいいって〜。おもしろそうじゃん。」「うっせぇ。俺はこっちがいいんだよ。な、忍足?」
「どっちでもええわ。はよどっち行くか決めてぇや。」
PとQの間でかれこれ十分は経過している。
ちなみにPは“TRUE or DIE”自分の未来を映し出す館。
嘘発見機を装備し、様々な質問の後、自分の顔を写真に取り、
機械に通すと自分の未来がわかるという最新技術。
Qは“sweets”お菓子の形をした建物の中でお菓子の乗り物に乗り、
○×クイズに答えていくゲームである。
クイズの出題される場所では、道が二つあり、
出されたクイズの答えとしてあってると思う方のボタンを押すと、その方向へと進む。
既定数値をクリアできると、その先には有名ケーキ店が提携している
ケーキバイキングが待っているというのである。
「ケーキだぜ!?お前、ケーキと未来なら断然ケーキだろぃ!?」
「俺きのう食べたから食べたくないんだって・・・。」
「そんな理由かよ!ならいいじゃん!行こうぜケーキ。」
「全然よくないよ!?二日もケーキ食べたら気分悪くなっちゃうって!」
「俺ならケーキが何日続いたって食える。
さ、行こう行こう!ケーキが俺を呼んでいる。」
そう言うと、丸井はさっさと一人で中へと入っていってしまった。
その背中を千石が恨めしげに、うなだれて見つめる。
忍足は苦笑い、千石の背中を押して、二人も中へと入った。
「どうする?どこ行く!?」
大きなリュックを背負った向日が不二と幸村を交互に見遣った。
幸村はパンフレットを開きながら、自分の頭上を大きくそびえ立つ観覧車を見上げた。
「@の観覧車もいいけど・・・やっぱり最初はAのコーヒーカップ、かな?」
「は?コーヒー・・・カッ・・・プ?」
目をパチクリさせて、楽しそうにパンフレットを閉じる幸村を見つめた。
嫌だ。
瞬時にそう思ったが、向日はそれを口に出す勇気がなかった。
「僕はDのメリーゴーランドがいいんだけど・・・。向日はどこか行きたいところとかない?」
「え、俺・・・?」
AとDの二つ以外なら。
なんてことを瞬時に思ったが、向日はこれも言う勇気がなかった。
何故なら二人の目が向日をギロリと見つめていたからだ。
不二にかぎっては目が開眼している。
(意見・・・言わせてくれなさそう。)
「ないみたいだね。じゃあAとD、先にどっち行く?」
「俺はあとでもいいよ。楽しみはあとにとっておくものだからね。先にDへ行こうか。」
顔の引き攣った向日を無視し、会話を広げる二人。
メリーゴーランドはすぐ目の前にあった。
馬だ。馬がいた。
係員を呼びに行った不二を見ながら、
向日はいまだ楽しそうにパンフレットを見つめる幸村に近付いた。
「・・・な、なぁ。」
「ん?何だい?」
「コーヒーカップの何が楽しいの?」
「楽しいよ?みんなで一つのカップに寄り添って、あの豪快なスピンの中、
意識を飛ばす仲間達なんかは特に。・・・・・・ね?」
「・・・・・・・・。」
首を傾げて微笑む幸村に、向日は言葉を失くした。
自分はこのあとそんな目にあうのか。
逃げたい。
この時ばかりは、自分のくじ運を恨めしく思った。
「お待たせしました。さぁ、こちらへどうぞ。」
中へ入ると、不二は嬉しそうに一番近い白馬に腰がけた。
幸村がその近くにあった、カボチャの馬車に足と腕を組んで座った。
「・・・・何で違和感ねぇんだよ。おかしいだろ・・・・・・・。」
三人だけしか乗っていないメリーゴーランド。
寂しいなと思いつつ、向日もしぶしぶ入口に一番近い馬に跨がった。
「見てみろよ。不二さん達、メリーゴーランド乗ってるぜ!」
楽しそうな神尾が指差す方へと、同時に振り向く越前と鳳。
彼ら二人の表情は途端に引き攣った。
「・・・・不二先輩楽しそう。」
「向日先輩・・・不機嫌だけど一番違和感がないな。」
「幸村さん態度でかっ!」
可愛いらしい音楽とともにゆっくりと回り続ける不二、幸村、向日。
笑えた。
「ヴォォォォオオオオ!」
「ギャァァアアアア!!!」
「サン!?」
ドテッ。
腰を抜かし、地面へと尻餅をつく。
目の前には触れないとわかってはいるが、世にも恐ろしいゾンビが立ちはだかっていた。
「あ゛〜もう!何してんスか!」
切原君が銃を放つ。
目の前のゾンビは荒々しい血を噴き出して消えた。
しかし、周りにはまだよちよちと歩き回るゾンビがたくさんいる。
次々と消されていくゾンビ達。
切原君と宍戸君とジロー君も中々ではあったが、
私のチームである仁王君と跡部君の銃捌きは見事だった。
「いつまでそこにいるんスか!?置いて行かれるっスよ!?」
「こ、腰が抜けて立てな・・・。」
「はあ!?・・・・・・ったくもう!
・・・・・・・・サン、怒んないでよ!」
そう言うと切原君は私を軽々と持ち上げ、少し離れたみんなの後を追った。
「ちょっ怖い怖い怖いぃぃいいいい!」
「だぁぁもう!暴れないで下さい!落っこちるっスよ!?」
襲ってくるゾンビを、空いている片手で銃を放つ。
前方に、立ち止まっているみんなの姿がぼんやりと見えた。
「ちゃん!大丈夫!?急にいなくなったからビックリしちゃったよ!」
「・・・大・・丈夫。ごめんなさい。」
ジロー君の声が響く。
気がつけば、目の前はゴールだった。
“finish”という文字が暗闇の中、赤く光っていた。
「赤也・・・いつまでそうしとるつもりかの?」
「え?あ、忘れてた・・・・。もう立てますか?」
頷くと、切原君は私を地面へと降ろしてくれた。
まだ腰が浮いた感じがする。
足もおぼつかない。
情けないなぁ・・・・私。
「切原ずっる〜い!何Eとこ取りしてんのさ!」
「いいとこ取りって・・・・・・アンタ達がサン置いて行ったんでしょ!?」
「ったく、俺達もちょっと熱くなり過ぎたな。激ダサ。」
「悪かったな、。怪我はねぇか?」
「うん、大丈夫。気にしないで?それより早く外に出ようよ・・・。怖い。」
「そうじゃな。出口はすぐそこ・・・・行こう。」
仁王君を先頭に、私達は“GUNS ZONE”を出た。
出口をでるとすぐにモニターがあり、個人とチームの点数が表示されていて、
もちろん私は0点。
仁王君と跡部君の活躍で私達三人の合計は、なんと、9700点だった。
ジロー君達の合計は7800点だった。
「くっやC〜!!でも楽しかったね!」
「は怖かったみたいだけどな。
それにしても一万点まであと三体だったのに・・・・惜しかったな。」
モニターを見上げながら、宍戸君が苦笑った。
奥の方から、先ほどスタート地点にいた男の人が出てくる。
手には、茶色い封筒が握られていた。
「お疲れ様です。仁王様、跡部様、様のチームには謎解きの鍵となるこの封筒を差し上げます。
中に入っているものは他のチームには見えないよう、三人だけで見てくださいね。」
封筒を受け取る。
中身はたぶん紙だろう。
封筒は薄っぺらくて軽かった。
「じゃぁ、またあとで会いましょうね♪仁王先輩、サンにセクハラしちゃダメっスよ!」
「俺は小心者じゃ。セクハラなんてできん。じゃあな。」
「あっとべぇ〜バイバ〜イ!ちゃんもね!」
「うん、バイバイ。また会おうね。」
「宍戸、ジローを頼んだぞ。途中で寝て起きなかったら俺様を呼べ。」
「ああ、そうするよ・・・・・・・じゃあな。」
宍戸君と切原君は、先に走っていってしまったジロー君を追って、
呆れたように溜め息を吐きながら、私達と離れた。
私は封筒を見つめ、少し強くなった風に背筋が震えた。