僕たちは、信じていた。



この
真実から逃げたくなかった。































「なあ、幸村君・・・・あれって宍戸じゃねえ?」

 

 

 

 

 

丸井は上を見上げながら指をさす。

顔が多少引き攣っているように見えるのは気のせいではないだろう。

幸村はベンチに切原を寝かすと、自分も上を見上げた。

 

 

 

 

 

「・・・・宍戸・・だな。」

「アイツ何やってんだよ!危ねえだろぃ!?」

「・・・・すごい。」

「何感心してんの!?ちょ、落ちたらシャレになんねえって!どうにかなんないわけ!?」

 

 

 

 

 

慌てる丸井を無視して、幸村にしては珍しく、無防備に口を開けて上を見上げている。

そう、彼らの目には今、宍戸が観覧車を登っている姿が映っているのだ。

かなり危なっかしい。

観覧車の梯を登りきり、目的のボックスの軸を渡っている。

そのボックスは扉が開いていて、中にと鳳がいるのが見えた。

 

 

 

 

 

「あ、鳳の奴!は何で仁王といないわけ!?何で鳳と観覧車なんかに乗ってんだよ!」

「・・・・何かあったみたいだな。丸井、跡部を呼んでくるからアイツらから目を離すなよ。」

「了解!」

 

 

 

 

 

幸村は先ほど見た、カフェテリアでジローと話をしていた跡部のもとへと走り出した。

丸井はハラハラしながらも宍戸を見上げる。

宍戸は勢いよくボックスに飛び込んで行った。

ボックスが左右に激しく揺れた。

 

 

 

 

 

「バカかアイツは!そうっと入れよそうっと!」

 

 

 

 

 

地上から見守る丸井は、居ても立ってもいられない気持ちだった。

当然と言えば当然だろう。

切原が目を擦りながらのそっと起き上がった。

 

 

 

 

 

「ブン太サン煩いっスよ・・・・。」

「お前っ、これが黙ってられるわけねえだろぃ!下手したら死ぬかもしれねえんだぜ!」

「・・・・・はあ?」

 

 

 

 

 

切原は丸井が必死に指差す方へと視線を向けた。

一つだけ激しく揺れている扉が開いたボックスの中で、宍戸が鳳の首根っこを引っ張っている姿が目に入ってきた。

 

 

 

 

 

「・・・・あの人達・・・・何してんスか?」

「宍戸が観覧車登ってあの中に飛び入ったんだよ!危なっかしいったらありゃしねえ!俺まで心臓バクバク言ってやがんの!」

 

 

 

 

 

丸井は若干、怒っていた。

そんな丸井を見て、切原は再び観覧車へと視線を向けた。

 

 

 

 

 

「・・・・あの人、バカだバカだとは思ってたけど・・・やっぱりバカだったんスね。宍戸サンって。」

 

 

 

 

 

もはや誰も宍戸を褒める者はいない。

切原は呆れたように溜め息を吐いた。

ボックスの中では、宍戸と鳳が言い争っているように見える。

しばらくすると、宍戸が体勢を崩し、倒れそうになった。

 

 

 

 

 

「ぎゃああああああああああ!!!宍戸が死ぬーーーーーーーーーー!」

「!!!!!」

 

 

 

 

 

丸井が頭を抱え、もう駄目だといった顔で宍戸に釘付けになっていた。

その瞬間、事態はもっと悪化した。

今度は宍戸を庇ったが落ちてくるではないか。

のおかげで何とか助かった宍戸も、焦って振り返る。

手を伸ばすが、遅い。

は確実に地上に向かって落ちてきていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これって、かなり重要な手掛かりじゃないっスか?」

「っていうか・・・俺、開いた口が塞がらねえよ・・・。」

 

 

 

 

 

 

越前が蓋を閉める。

神尾は驚いたまま立ち尽くしていた。

そんな二人を不二は少し後ろの方で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「まさか・・・・まさか、俺信じらんねえよ!だって・・・・。」

「でもまあ、これではっきりしたんじゃない?あの氷帝の監督さんがどうして俺達をここに呼んだのか。」

 

 

 

 

 

 

越前が棺の蓋の上に書かれた文字を指でなぞる。

そこには“榊”と書かれてあった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・榊先生があの大富豪だったんだね。」

 

 

 

 

 

 

そう言うと、不二は棺に近寄り、また蓋を開けた。

そこにはあの写真と同じミイラが眠っていた。

不二の眉間に皺が寄る。

 

 

 

 

 

 

「さしずめ、ちゃんの養女になる前の苗字がだったのかな・・・・。」

 

 

 

 

 

 

人差し指で骨に触れる。

ざらついていた。

それを見て、越前が顔をしかめた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・千石さんもこれ、見たかな?」

「たぶんね。・・・・数ある倉庫のうち、この倉庫だけ扉が開いてた様子からして・・・千石は見たんだ。」

「・・・・すごい確率でこの倉庫を見たんスね。」

 

 

 

 

 

 

神尾がつくづく千石の強運に感心する。

といっても、あまりラッキーなところを見たことがない彼は、それほど信用していないようだが・・・・・。

不二が開けている蓋を越前は閉めた。

 

 

 

 

 

 

「不二先輩、行きましょうよ。」

「っ・・・そうだね。長居しないほうがよさそうだ。」

 

 

 

 

 

 

不二は苦笑い、頷いた。

越前が一度、棺に視線をやると、三人は倉庫から出て行った。