僕たちは、信じていた。



この
真実から逃げたくなかった。































死んだって消えない想いがあるのならそれはきっと憎しみなんかじゃなく、

 

 

 

 

 

死をも越えた愛なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

丸井君がもう一度私の名前を呟いた。

目に溜まった涙が私の視界を歪ませた。

頭がぼうっとする。

 

 

 

 

 

「・・・・憎い。」

 

 

 

 

 

ふと呟いた台詞にはっと口を押さえる。

私・・・・今何て言った?

小さな声だったけどみんな、黙って私を見ていたからはっきりと聞こえたみたいだ。

丸井君が目を見開いていた。

 

 

 

 

 

「何・・・言ってんだろ私。口が勝手に・・・。」

「・・・・ちゃん。」

 

 

 

 

 

ジロー君が私の名前を呟いて眉をしかめた。

やめて。

やめてよ。

そんな目で私を見ないで。

私・・・・私は私。

ちゃんと意識あるよ?

だからやめて。

そんな視線、私に向けないで!

 

 

 

 

 

「・・・・そんな顔しないでよ。私は普通だよ!?何ともないんだから!!」

「落ち着きんしゃい。誰も何も言っとらん。」

「だってみんなの私を見る目が普通じゃないもん!落ち着いてなんていられない!私はッ・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仁王君に頬を叩かれる。

思わず涙が零れそうになった。

ああ、私は何をそんなに焦っているんだろう。

自分を見失って・・・・馬鹿だ。

 

 

 

 

 

「・・・・ッ。」

「・・・・すまんの。痛かった?」

「ううん。・・・ごめん。ありがとう。」

 

 

 

 

 

叩かれた頬を優しく撫でられる。

ひんやりしていて気持ちが良かった。

 

 

 

 

 

「痛かったらいつでも言いんしゃい。一生かけて俺が面倒見るぜよ。」

「お前が言うと何か本気っぽいからやめろよ!」

「ぽいんじゃなくて本気なんやけど・・・。」

「なおさら悪いわ!」

 

 

 

 

 

丸井君と仁王君の言い争いが続く。

といっても丸井君がキャンキャン吠えてるだけみたいなんだけど・・・。

そんな二人の間に幸村君が入り、止めた。

 

 

 

 

 

「とにかく、一刻も早く千石と赤也を探そう。・・・・嫌な予感がする。」

「同感。特に赤也が心配心配!」

「・・・・ああ。赤也が特にだな。仁王、と一緒にいてやって。代わりに俺は丸井とペアを組む。他はさっきの組み合わせで探すぞ。」

 

 

 

 

 

幸村君が他のみんなに振り返った。

隣には嫌そうな表情の丸井君。

幸村君って嫌われているのだろうか。

いや、怖がられている、が正しいだろう。

 

 

 

 

 

「不二先輩は?不二先輩はどうするんスか?」

「不二は・・・そうだな。神尾と宍戸で組んで。」

 

 

 

 

 

不二君が頷くと、越前君もホッとしたように肩を下ろした。

跡部君とジロー君、忍足君と越前君、鳳君と向日君が同じペアなんだ。

みんなそれぞれのペアで固まっていく。

本当にこの組み合わせで大丈夫なのだろうか。

いつかも思った。

そう、初めのチームを決めた時だ。

仁王君が私の頭を撫で、口パクで“大丈夫”って言った。

 

 

 

 

 

「何でわかったの?私の思ってたこと。」

「顔に出とる。は顔に出やすいから何を考えとるかすぐわかるナリ。」

「うっそ!本当に!?そんなつもりないんだけどな・・・・。」

「ピヨッ。」

 

 

 

 

 

最後、仁王君の変な擬声語で私達の会話は終わった。

幸村君の解散の合図で皆は千石君と切原君を探しにそれぞれわかれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきは・・・・ありがとう。」

 

 

 

 

 

二人きりになった私と仁王君。

私は仁王君にお礼を言った。

彼のおかげで自分を見失わずにすんだから。

すると仁王君は困ったように笑った。

 

 

 

 

 

「叩いてお礼言われるとは思わんかった。・・・・はMなんか?」

「・・・・は?」

「冗談じゃ。」

 

 

 

 

 

間抜けにも口を開けて仁王君を見つめる。

彼は喉を鳴らしながら笑い、ベンチに座った。

私達の少し離れた地面に、写真が並べられていた。

 

 

 

 

 

「・・・写真?」

「このゲームで貰った写真。全員のを集めたら一枚の写真になった。」

「そうなの?何の写真?」

 

 

 

 

 

私はベンチから立ち上がり、写真に近寄った。

後ろから仁王君がじっと私のことを見ている気がする。

仁王君は私の質問に返事をくれなかった。

まあ見ればわかることだし・・・。

私は写真の前まで来ると、それが一目で何の形かわかった。

 

 

 

 

 

「・・・・・み、ミイラ!?」

「それはお前じゃ。。」

「え?」

 

 

 

 

 

振り返った。

仁王君は腕を組んで私を見ていた。

これが・・・・私?

この写真に映るミイラは私なの?

仁王君はどうしてそんなことがわかるの?

 

 

 

 

 

「その写真のミイラ、顔の形が女の形をしとる。この話から考えるとお前しか当て嵌まらん。」

「・・・・そっか。これが・・・・私。」

 

 

 

 

 

死んだ後もこうして形に残ってる過去の私。

不二君のミイラとはまた少し違う雰囲気を漂わせている。

写真だからかな?

何故だろう。

沸々と煮えたぎる憎悪。

そんな感情、いらないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・誰も幸せになんてさせない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻はあの時と同じ。

雪が、またふわふわと空を舞い始めた。