僕たちは、信じていた。
この真実から逃げたくなかった。
「はどうする?どこのチームに入る?」
不二君が一人、ぽつんと立っていた私に声をかけてくれた。
今みんなが話し合っていたのはこの遊園地で行うゲームのチーム分けのことだ。
五チーム各三人ずつ。
同じ学校の人同士が固まらないように、各チーム、同じ学校の人は最高二人まで。
それだけがルールだ。
「私は・・・どこでも。」
「ハイハ〜イ!俺のチームがいい!ちゃん、こっちおいでよ!」
不二君と私の間に入り込んで来たのは千石君。
千石が私の手を取ると、不二君の目が開眼した。
・・・怖い。
そこまで開くなら始めから開けておいてほしいと思った。
「ダーメ。君のところなんかに入れたらの処女が危ないからね。」
「はい!!?」
不二君が千石君に連れていかれかけていた私を引き戻す。
それよりも今何ておっしゃましたか?
私を処女と勝手に決めつけないでよ!
処女だけど・・・。
何も言えない私は少し悲しくなった。
「失礼だね不二君。でも女の子いないと楽しくないじゃん!やっぱりここはみんな平等にジャンケンしようよ!」
「バーカ、そんなことしたらお前が有利だろぅが。」
「あっれー?俺のラッキー信じてくれてるの?さすが宍戸君だね。」
「ばっ!ちっげぇよ!そんなんじゃねぇし!」
右手にはニヤケ顔の千石君。
左手には笑顔に戻った不二君。
前方にはキレ気味の宍戸君。
・・・この三人のチームには入りたくない。
前途多難だ。
そう思ってしまった。
「こうなったらしょうがねぇな。まず俺達氷帝が五チームに一人ずつ分かれるぜ。
それを基準に分けようじゃねぇか。いいだろ?」
「そうだな。一番人数の多い氷帝が分かれるのはいい案だ。そうしよう。」
幸村君の了解を得ると、跡部君が一歩前へと出る。
すると紙に0から5の数字を書いて、見えないように折りたたみ、
宍戸君、鳳君、ジロー君、忍足君、向日君に引かせた。
そして余った紙を自分の物とする。
未だ両手を二人に掴まれて動けない私は、その光景を黙って見ていた。
「0を引いた奴は誰だ?」
「んー俺ー。」
「・・・・ジローか。ジロー以外の奴はその紙ちゃんと持っとけよ。」
そう言うと跡部君はまた番号を書き始めた。
今度は1から5を二枚ずつ。
そして折りたたんで、残りのメンバーに引かせた。
もちろんジロー君と私も引いた。
結果。
チーム@
跡部
仁王
チームA
忍足
丸井
千石
チームB
宍戸
芥川
切原
チームC
鳳
神尾
越前
チームD
向日
不二
幸村
「うげぇ〜、男ばっか・・・アンラッキー・・・。」
「喜べ千石。可愛いブン太様がいるだろぃ?」
「綺麗な忍足君もおるで。両手に華やん。」
(冗談キツイよ二人ともっ!)
千石君が本当に嫌そうな顔をしている。
よっぽど女の子と同じチームがよかったのだろうか。
でもしょうがないもんね。
女は私一人なんだし・・・。
さっき千石君と言い争っていた不二君へとチラリ、視線を移す。
笑顔で手を振られた。
「宍戸さん・・・離ればなれですね。」
「んあ?別にいいだろ?こんなゲームのチームくらい。・・・ったく、俺はジローのお守りかよ。面倒だな。」
「・・・・宍戸さん、頑張って下さい。」
鳳君・・・本当に寂しそうだな。
きっと宍戸君が大好きなんだ。
それに宍戸君はまったく気付いてなさそう。
彼、鈍感なんだね。
そんな二人の隣で切原君が物珍しそうに、寝ているジロー君の頬を抓って遊んでいた。
「俺らって1、2年だけだよな越前!」
「・・・それもそうっスね。ま、どうでもいいけど。」
「・・・・ホント、お前ってつくづくムカつく奴だよな。」
みんなを見ていると、顔見知りなだけあってか、すごくいい感じに仲が良く見える。
それに比べて私は少し、いや、かなり浮いてる気がした。
女だからってだけじゃない。
何か、みんなと違う。
妙な疎外感を感じた。
「よろしく、。」
「え、あ、よろしく!えっと・・・・仁王君!」
いつの間にか、私の隣には仁王君が立っていて、こっちを向いて笑っていた。
いけない。
意識がどこかへ逝ってしまっていたようだ。
私は慌てて微笑み返した。
「アレじゃ。・・・もし跡部に何かされそうになったらすぐ俺に言いんしゃい。手遅れになるとよ?」
「人を野蛮人みたいに言うんじゃねぇよ。一番何かしそうなのはお前だろぅが。アーン?」
「・・・俺はピュアじゃけん。女の子相手に何もできん。」
今度は左に仁王君。
右に跡部君。
二人に挟まれてどうすればいいかわからず、ただ二人を交互に見遣るだけの私。
もしかするとこれは最悪のメンバー?
「決まったようだな。では、ゲームの説明だ。よく聞きなさい。」
そこで、オジサンはパンフレットを見ながら真ん中に立った。
みんなオジサンを見る。
「この遊園地内の至る所に建っているアトラクションがある。今回使用できるのは全部で二十三あるうちの十二個だ。
それが今このパンフレットに載っている@とA、DとEとF、H、JとK、M、PとQ、Sだ。」
みんなパンフレットを開き、言われた番号に丸をつける。
私も急いでパンフレットを出し、隣の仁王君のを覗きながら自分のに丸を付けた。
仁王君のパンフレットには、トイレの場所にまでも印をつけてあった。
「そこに行ってこの謎を解け。十二の建物のうち、いくつかに謎を解く鍵が隠されている。
いち早く解けたチームにはご褒美があるから全力を尽くすように。」
五チームそれぞれに一枚ずつ紙が配られる。
紙を受け取った仁王君。
私がそれを覗くと、そこには写真と、謎々のようなものとヒントが書かれていた。
「各自の荷物は警備室に置いといて構わない。必要最低限の物だけは持ち歩きなさい。
私は警備室にいるから何かあればそこに呼びに来るように。以上だ。いってよし!」
オジサンがダンディにキメると、辺りは一度、しんと静まり返った。
そしてオジサンは、ついてきなさいとだけ言って遊園地内の警備室へと向かった。