僕たちは、信じていた。
この真実から逃げたくなかった。
「俺は跡部家と忍足家を潰しに行く。」
そう言ったのは幸村家の息子。
大切な仲間である切原家の息子を殺した忍足家の息子を怨んでいたのだ。
それを聞いていた丸井家の息子は彼を止めた。
しかし彼は丸井家より力が強かった上に、彼には何故か昔から逆らえなかった。
丸井家の息子はとりあえず、このことを知らせにまずは忍足家を訪ねた。
その時、彼は衝撃的な事実を知ったのだ。
そして絶望した。
もう誰にも止められない、終わらすことのできない悲劇。
彼は忍足家の息子を川沿いに呼んだ。
忍足家の息子は黙って川沿いを歩き始めた。
「跡部家を潰すって・・・・何考えてんだよお前の親父は!お前の家と跡部家は有名なくらい仲良かったじゃねえか!」
忍足家の息子は黙ったままひたすら歩き続けた。
そう、彼の父親は息子と正反対の考えだったのだ。
と跡部家の息子を守りたい忍足家の息子と、と跡部家の息子を殺したい父親。
父親は跡部家の力を羨んでいた。
同じ地位のはずなのに、忍足家の力より跡部家の力の方が強かったからだ。
息子は父親には逆らえない。
忍足家の息子は隠し持っていた拳銃を取り出した。
切原家の息子を殺した拳銃だ。
丸井家の息子は一歩、後ずさった。
彼は今、自分を守る武器は何一つ持っていなかったからだ。
「俺はな・・・・最低な男なんや。自分の意志も貫かれへん・・・弱い男や。」
引き金を引いた。
雪解けを始めた川沿いでまた、一人の男が命を落とした。
もうすぐ訪れるべき春を見ることもなく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みんな・・・・・馬鹿ばっかりじゃねえか・・・・よ・・・・・・・・畜生・・・・。」
そしてちょうどその頃、神尾家には鳳家の息子が裏切ったと言う知らせが届いた。
の居場所を越前家の息子に教えたのは鳳家の息子だったと芥川家の息子が言ったのだ。
彼は鳳家が彼女に全面協力していても、その息子があまり乗り気でなかったのを知っていた。
鳳家の息子は、大好きだった、兄のような存在だった宍戸家の息子が死んだことに絶望感を抱いていたからだ。
彼だって彼女に想いを寄せていた。
しかしそれと同じくらい宍戸家の息子を尊敬し、慕っていた。
鳳家の息子はそんな彼の死を聞いた時点で、この狂った惨劇を全て、彼女のせいだと思い込んだのだった。
彼女を怨むことによって彼女を殺したくなる。
彼女を殺してしまえばこの苦しみは終わる。
そう都合のいいように、無理矢理、自分に思い込ませることで、自分を守った。
そして自分を守ることを選んだ自分を憎んだ。
よりも大人達よりも、誰よりも自分を憎んだ。
もともと人が良かった鳳家の息子だ。
最終的には自分を責めてしまうのだった。
芥川家の息子は、そんな彼を神尾家に呼んだ。
神尾家に訪れた彼に芥川家の息子は問う。
「ねえ、この惨劇を・・・・終わらせたくない?」
鳳家の息子は複雑な表情のまま黙って頷いた。
神尾家の息子は二人を見つめる。
しかし芥川家の息子は、この時点ですでに気付いていたのだ。
この物語は終わらないだろうということに・・・。
それでも彼は鳳家の息子の返事に満足し、自分の考えを提案した。
その内容はいたって簡単で、究極論であった。
鳳家の息子は迷った。
しかし頷いた。
それしか道がなかったから。
神尾家の息子は頷かなかった。
芥川家の息子はそれはそれで別に良かった。
神尾家の息子には大きな役割があったから。
「俺達は皆、一度死ぬんだ。そしていつか生まれ変わってまた巡り逢う。そこでは今まで通りの幸せな日々を送るんだ。最後まで・・・・。
そのためには君に、この惨劇の一部始終を書き留めてほしい。生まれ変わって俺らが巡り逢ったその時、二度とこんなことが起こらないためにも・・・・。」
今度は神尾家の息子も頷いた。
自分に任された大きな役割。
彼は一冊の真っ白な紙に、この物語の一部始終を書き留めることを誓った。
そして、鳳家の息子と芥川家の息子は二人、跡部家に向かった。
跡部家に辿り着いた仁王家の息子とを殺すために・・・・。