僕たちは、信じていた。



この
真実から逃げたくなかった。































「オジサン。寒いね。」

「・・・ああ。」

「オジサン、みんな遅いね。」

「・・・ああ。」

「オジサン、みんな何してるのかな?」

「・・・知らん。」

「私以外に女の子っているの?」

「・・・全員が来ればわかることだとさっきから言っているだろう。」

「・・・・オジサン。」

「何だ?」

「・・・・寒いね。」

「・・・・そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきから繰り返されるこの会話。

そろそろオジサンもキレだす頃だろう。

一番乗りだった私は、もうかれこれ30分も待っている。

と言っても、私が集合時間の二時間も早く来過ぎただけなのだけれど。

オジサンなんか集合時間の三時間も前からここにいるらしい。

何のためか、それは不明だ。

招待状の説明に載っていた榊太郎(43)というのはこのオジサンのことらしい。

ダンディだ。

私達二人はずっと、雪の積もった入口で、これから来るであろう残りの14人を待っていた。

 

 

 

 

 

「あ、オジサンオジサン!誰か来た!」

「むっ・・・跡部達だな。」

「・・・・あとべ?」

「私の教え子達のことだ。」

 

 

 

 

 

この人は教師なのか。

言われるまでまったく気づかなかった。

はっきり言おう。見えない。

てっきり経営者か何かと思っていた。

徐々に、こちらに向かってくる人達の顔がはっきりと見えてきた。

 

 

 

 

 

「(男前じゃん。)・・・ってか女がいない。」

「・・・跡部、忍足、向日、宍戸、鳳、芥川。よく来たな。」

 

「「「「「「おはようございます。監督。」」」」」」

 

 

 

 

 

みんなそれぞれの荷物を地面へと置いた。

おいおい、オカッパの人の荷物やけに多すぎない?

一人だけ鞄膨れ上がってるんだけど・・・。

 

 

 

 

 

「跡部、この子が今回参加する唯一の女性だ。仲良くしてやってくれ。」

「はい。」 「・・・はい?」

 

 

 

 

 

跡部と呼ばれた泣き黒子の男前と私の返事は同じ言葉のはずなのに、私の返事はまったくもって間抜けな声だった。

私は自分の耳を疑った。

跡部君は、私の方へチラリと視線を移した。

 

 

 

 

 

「オジサン!私が唯一の女ってどういうこと!?」

「そのままの意味だ。女はお前だけだ、。」

「聞いてないよ!?」

「当たり前だ。言ってないからな。」

「・・・・・・・(屁理屈!)」

 

 

 

 

 

私が絶望感に浸っていると、帽子を被った男前が近づいてきた。

と同時に、背の高い男前も近づいてくる。

 

 

 

 

 

「まぁ元気出せって。女一人だろうが・・・別にいいじゃん。」

「そうですよ。俺達と仲良くすればそれでいいじゃないですか!」

「・・・・・・・・君達と?」

 

 

 

 

 

男前と仲良く・・・・。

悪くないかもしれない。

まさに逆ハーレムという奴ではないだろうか。

私の頭の中では楽しい妄想が膨らんでいった。

しかし、それもすぐにオジサンの発言で現実へと引き戻される。

 

 

 

 

 

「うむ。・・・集合時間が過ぎたな。他の奴らは何をしているんだ。」

「遊んでるんじゃないですか?俺達も遊んできました。」

「違う。それはお前とジローだけだろうが。俺達まで巻き込むな。」

「違います。忍足先輩もです。跡部さん。」

 

 

 

 

 

オカッパにガンを飛ばす跡部君。

そしてそれに更なるツッコミを入れたのが長身の男前。

一体何して遊んできたのだろう。

私は少し疑問に思ってしまった。

 

 

 

 

 

「ちゃうやん。ちょっと手伝っただけやん。俺遊んでへんし。」

「てめぇ、俺に雪投げてきたじゃねぇか!遊んでんだろ!?」

「それを言うなら宍戸だって俺に投げ返してきたやん。」

「俺は遊んでねぇよ!やられたからやり返しただけだろぅが!」

 

 

 

 

 

帽子の男前、宍戸。

眼鏡で関西弁の男前、忍足・・・・か。

少しずつ彼らの名前と顔を覚えていく。

これから仲良くしなきゃいけないからね。

仲良く・・・・・・できるんだろうか。

 

 

 

 

 

「ジロー、起きろ。凍死するぞ。」

「・・・・ん・・・・・・・寒い。」

「なら寝んな。オラっ、今日は樺地がいねぇんだ。寝てたら放って行くぞ。」

「・・・・・・ん〜・・・・じゃあせめてみんなが集合したら・・・・・起こして?」

 

 

 

 

 

ジローと呼ばれた男前は鞄を枕にして、雪の上で寝ている。

それを跡部君が足で蹴り起こした。

奇妙な光景だ。

サディストだ。

一度起きたジロー君だけど、またすぐに気持ちよさそうに寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かれこれ二十分後。

このような会話が続く中、向こうの方から、複数の団体が向かって歩いてきていた。

おそらく残りのメンバーだろう。

隣にいるオジサンが怖い。

 

 

 

 

 

「遅れてすみません。少し道草を食ってしまいました。」

「立海の部長がそんなのでいいのかよ。アーン?」

「・・・・・来た道の途中に不細工な雪だるまがあってね。つい遊んじゃったよ。」

「・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

1、2、3、4、5・・・・・・・14

私を入れて15。

ちょうど全員がそろった。

みんな男前で、本当に女は私だけのようだ。

オジサンが少し、咳払いをした。

 

 

 

 

 

「今日は良く来てくれた。では、顔見知りが多いが・・・自己紹介から初めよう。」

「は〜い!じゃぁまずは俺からね。千石清純。ラッキー千石って言われてるよ☆」

 

 

 

 

 

一番端にいたオレンジ色の頭をした人。

千石清純。

 

 

 

 

 

「僕は不二周助。」

「・・・・越前リョーマっス。」

 

 

 

 

 

狐目の・・・・不二周助。

小さくて無愛想な・・・・・越前リョーマ。

 

 

 

 

 

「神尾アキラ。不動峰、2年っス。」

 

 

 

 

 

鬼●郎ヘアー・・・・・神尾アキラ。

 

 

 

 

 

「俺は向日岳人!んでそこで寝てるのが芥川慈郎ね!」

「忍足侑士。よろしくな。」

 

 

 

 

 

オカッパは向日岳人か。

寝てるのが芥川慈郎ね。

そして眼鏡の関西弁が・・・・・忍足侑士か。

よっし、今のところ順調に顔と名前を覚えることが出来ている。

 

 

 

 

 

「宍戸亮。」

「・・・・鳳・・・長太郎です。」

 

 

 

 

 

帽子の・・・・宍戸亮。

彼はかなりの無愛想だ。

その隣にいるのが長身なのにモジってる・・・鳳長太郎。

 

 

 

 

 

「幸村精市。遅れてきてなんだけど・・・みんな喧嘩のないように仲良くしよう。」

「立海大附属2年エース切原赤也ッス!」

 

 

 

 

 

幸村精市・・・女の人みたい。

そしてその横にいる元気なのが・・・切原赤也。

 

 

 

 

 

「俺は丸井ブン太。シクヨロ☆」

「・・・・・仁王雅治。シクヨロ。」

 

 

 

 

 

ガムを噛みながらブイサインをする赤い髪の男前。

丸井ブン太。

そして銀髪の・・・仁王雅治。

胡散臭さが漂ってるな。

 

 

 

 

 

「オイ仁王、俺様の台詞ぱくんなよ。お前が言うとキモイ!」

「失礼じゃの。可愛いぜよ。」

 

 

 

 

 

みんなの視線が監督の隣にいる跡部君にいく。

跡部君が組んでいた腕を下ろした。

 

 

 

 

 

「跡部景吾だ。よろしく。」

 

 

 

 

 

全ての男前の紹介が終わった。

視線は最後のメンバーである私にくる。

恥ずかしさと緊張。

私は俯いて、視線を足元の雪へと移した。

顔・・・・あげられないよ・・・・。

 

 

 

 

 

「頑張って!名前言うだけだから。ね?」

 

 

 

 

 

誰が言ったのかわからない。

だけどこの声は・・・・千石君?

私は体の横で手をギュッと握り、視線は足元の雪のままで顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・です。よろしく願いします!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の方はもうヤケクソ。

やっとのことで視線を前にすると、みんな目を真ん丸くして私を凝視していた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・ぶっ。」

 

 

 

 

 

誰かが吹いた。

 

誰だ。

 

非常識な奴だな。

私はきょろきょろしながら犯人を捜す。

だけどそれはすぐに誰だかわかった。

 

 

 

 

 

「ジロー起きてたのか?」

「・・・・寒くてあんまり寝れなかった。」

「いきなり笑うなや。俺かて我慢しとったのに・・・・。」

「ふふ、これで自己紹介は終わったね。

みんな、今日は敵も味方もなしで・・・仲間として楽しく過ごそうね。」

 

 

 

 

 

幸村君の言葉にみんなが頷く。

 

 

 

 

 

ここから始まった。

私たちの物語。