僕たちは、信じていた。



この
真実から逃げたくなかった。































「あー!ちゃんだ!」

「お、ほんまやん。跡部のチームやな。」

 

 

 

 

 

屋敷を出ると、太陽の光で目がくらっときた。

そこに千石君の声。

急に現実に引き戻された気分だ。

不二君達のチームはケーキを目指して、もうこの場にはいなかった。

さっきまで向日君と繋がれていた方の手が寂しく感じた。

 

 

 

 

 

「偶然だね〜。これからどこ行く予定?もしよかったら一緒に行こうよ!」

「うん、いいよ!仁王君がEに行きたいらしくてそこに向かう途中だったんだ!」

「へえ、仁王、俺はKをお勧めするぜぃ?」

「残念、それは却下された場所ナリ。」

「はあ?ケーキが却下された!?あっりえねえ!お前ら脳みそどうかしてんじゃねえの!?」

 

 

 

 

 

喜びのあまり、私の手を握っていた千石君が小さな声で「君の胃袋がどうにかしてんじゃないの?」と呟いた。

丸井君と千石君の間に何があったのか。

気になるところだ。

 

 

 

 

 

「じゃあさじゃあさ!ちゃん、一緒にモノレール乗ろ!モノレール!」

「え、ちょ、待っ、千石君!?」

「千石!をどこ連れて行くんだよ!」

 

 

 

 

 

私の手を掴んだまま歩き出す。

逃げようとしてもやはり力では敵わない。

手は放してくれなかった。

千石君の思うがままに連れ攫われる。

後ろで丸井君が呼び止めたけど聞こえないふりでもしているのだろうか。

千石君は鼻歌を歌い出す始末だ。

 

 

 

 

 

「ちょっと、千石君!どこ行くの!?」

「モノレールだってば!すぐそこだよ♪さっきまで男ばっかでつまんなかったんだよね〜。ちゃんに出会えて本当ラッキーだったよ!」

「・・・・・まあ女は私だけだからね。でも私なんかと乗っても別に面白くも何ともないじゃない。」

「そんなことないよ。丸井君とケーキ食べてるより全然いい!超楽しい!」

「あ、そう・・・・なんだ?」

 

 

 

 

 

極上の営業スマイルとでも言うべきか。

千石君は私に向かってニッコリ微笑んだ。

一体彼に何をしたんだ丸井君!

千石君は相当根に持ってるみたいだよ!?

ケーキで物凄く何かを恨んでるみたいだよ!?

そんな会話の中、やや強引に連れて来られ、モノレールの目の前まで来た。

再び鼻歌を歌いながら中へと入って行き、階段を上がる。

後ろから跡部君達が何か言いながらついて来ていた。

どうやら千石君へのブーイングのようだ。

それもほとんどが丸井君からのものだった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・丸井君煩いね。」

「止まった方がいいんじゃ・・・・。」

「ダメダメ!そんなことしたら俺殺されちゃうじゃん!」

 

 

 

 

 

何故?

そう思ったけれど、あまりにも千石君の表情が真剣だったので聞くに聞けなかった。

とりあえず殺されちゃかなわないので、乗り場まで止まらずにやって来た。

どうやら二人乗りのようで、私と千石君二人横に並んで座った。

係員にシートベルトを締められる。

ちょうどその時、丸井君達が遅れて到着し、私達二人を見て指差した。

 

 

 

 

 

「ちょっと待てよ!二人乗り!?」

「何や、千石だけおいしい思いしてずるない?俺らどうすんねんな。」

 

 

 

 

 

出発した二人の背中を見つめながら、忍足は溜め息を吐いた。

係員が四人を誘導する。

しかしどうすればいいのかわからず、その場から動けなかった。

しかしすぐに、悔しそうな表情の丸井に仁王が近づき、腕を取った。

 

 

 

 

 

「俺もこれ乗りたい。丸井一緒に乗ろ?」

「はあ!?何で俺がお前と!?それにお前Eに行きたかったんじゃッ――――――!」

「俺と二人は不満か?」

「〜〜〜〜〜〜!そこまでは言ってねえだろぃ!?わかったよ。乗るよ!乗るからンな顔すんなっつーの!」

 

 

 

 

 

掴まれていた腕の手を振り払う。

そしてさっさと奥の座席に座った。

続いて仁王も手前の座席に腰を下ろす。

シートベルトを締め、モノレールは出発した。

跡部と忍足はただそんな二人のやり取りを呆然と眺めていただけだった。

二人が出発して初めて我に返る。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・俺らも乗るん?」

「しょうがねえだろ。乗るぜ。」

「ほんまかいな。勘弁してえや。」

「うっせえ、ぐだぐだ言ってないでさっさと乗るんだよ!」

 

 

 

 

 

最後の二人も係員に誘導され、しぶしぶ出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあ、下からじゃよくわかんなかったけどこうやって見ると何だか綺麗だね!」

「今回は手前のアトラクションしか使えないから奥の方へは行けないけど・・・・・・ここからだと向こうにまだいっぱいあるのが見えるね。」

 

 

 

 

 

千石君が指をさす方にはまだまだたくさんのアトラクションが並んでいた。

今日はあそこまでは行けないからどんなものなのかもわからない。

だけど見た感じではあっちの方が華やかで新しくできた遊園地って感じだ。

それに比べて少しこっち側は華やかさに欠ける気がしなくもない。

って、そう思うのは失礼だよね。

ゴメンねオジサン。

 

 

 

 

 

「ねえねえ、ちゃんは彼氏とかいるの〜?」

「え、い、いる!!」

「え、いるの!?」

 

 

 

 

 

千石君が驚いて目を見開いた。

本当はいないのに、私という奴は・・・・・・・・・急に痛い質問をされたものだから咄嗟に見栄を張ってしまった。

いや、別に張ったわけじゃないんだけど・・・・口が勝手に。

 

 

 

 

 

「アンラッキー、ちょっと狙ってたのに・・・・そっか、彼氏持ちかあ。」

 

 

 

 

 

ガックリうなだれる。

どうしよう。

別にこのまま嘘を通してもいいのだけれどバレた時が物凄く惨めになっちゃうから言った方がいいよね。

うん。

 

 

 

 

 

「あ、あのね千石君・・・・「キヨ。」

「は?」

 

 

 

 

 

私の言葉を遮ってニッコリと微笑む千石君。

何だろう。

早く懺悔をしなければならないのに・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「キヨって呼んで♪」

「え、き、キヨ?」

「そ、これからはそう呼んでね。ちゃん!」

 

 

 

 

 

手を握られ、私は思わず激しく頷いた。

何か・・・・完全にキヨのペースだよ。

絶対キヨは女慣れしてる。

何故か確信ができた。