君の死、僕の涙
いつも俺のことバシバシ叩きやがって。
同じクラスで俺の後ろの席のアイツ。
ほぼ毎日一緒に帰って家が近い。
いつまでもアイツは隣にいるんだと、俺は思っていたのに。
一番の友達
忙しくコートを走り回るアイツの姿が目に入るようになったのっていつからだっけ。
次々と辞めていったマネージャーの中で唯一最後まで残ったアイツは、俺から見ても頑張ってると思う。
決していいことばかりじゃないだろうこんな大変な仕事を文句を言いつつも最後までしっかりやり遂げるアイツは、
心の底からテニスが、この氷帝学園テニス部が大好きなんだと実感する。
だからこそアイツはどの女よりも輝いて見えるんだと、いつからか俺はそんな考えを抱いていた。
小便から帰って来たらコートで待ってろって言っておいたはずの長太郎がいなかった。
おかしいなと思って帽子を被り直し、ちょうど近くを通りすぎようとしたに声をかけてみることにした。
「おい、長太郎知らねぇか。」
「お、宍戸いるじゃん。長太郎だったら今コート出たところで宍戸捜してたよ。」
「はあ!?アイツ何やってんだよ!ちゃんとコートで待ってろって言ったのに!」
「聞こえてなかったんじゃない?長太郎ってば宍戸に愛想尽かされたと思って半泣き状態だったよー?」
「・・・・嘘だろ、ソレ。」
「うん嘘だよ。」
あっさりと認めるコイツを見て俺は思わず肩を落とした。
「おーまーえーなー・・・。」
「アハハ、じゃあね。宍戸はコートで待ってなよ。すぐ戻ってくるんじゃない?」
「ああ、そうする。・・・ったく。」
ニヒヒと歯を見せて笑うコイツは、実年齢よりは若く・・・というより幼く見える。
だから俺もたまにコイツのこんな顔を見ると、少し兄貴気分になって頭をくしゃくしゃ撫でてやると「ヘアースタイルが乱れる!バカ!」っつって頭を叩かれる。
それがまた痛いんだよな。
コイツの暴力って。
前に岳人が殴られた時に痣になったっつってに抗議してたっけ?
は欝陶しそうに相手にしてなかったけどな。
なんて思い出し笑いなんかしながらコートの真ん中でボールをラケットの上に転がし、長太郎が帰ってくるのを待った。
何でだろうな。
この時だけは何故か俺はアイツの頭を撫でてやんなかったんだ。
もう二度と撫でることが、アイツに怒られることができないなんて。
俺は思いもしなかったから。
少し太陽の光で反射したその綺麗な髪を、俺は触れることすらしなかったんだ。