君の死、僕の涙
俺とアイツが出会ったんはいつやったやろう。
たぶんマネージャーなる言うてみんなの前に立って挨拶した時やったっけな。
顔が可愛かったから俺も大歓迎で、馴れ馴れしく近寄った俺にアイツは物凄い嫌そうな顔をした。
あんな反応、アイツ以外誰がするっちゅうねん。
最後の優しさ
俺ら氷帝学園テニス部には顔は可愛いのに性格はめっちゃ活発なお姫さんがおる。
口は悪いしいらんことはするし。
暴力は奮うし怒ったら怖いし。
そやけど真面目で一生懸命で、テニスが大好きで。
人が落ち込んでたりした時なんかの変なところで優しい。そんな奴。
かけがえのない俺らの仲間。
アイツがおって初めて俺らは氷帝学園テニス部なんやと、本人前にしては絶対言ったらんけど俺はそう思ってる。
たぶん他の奴もそう思っとるはずやけどアイツにそれを言わんのは言ったらすぐ調子にのるからや。
あの性格なかったら絶対アイツもモテモテやと思うんやけどな、俺。
でも俺は今の性格やからこそアイツを・・――――
「おいコラ侑士!サボってないで練習出なさい!」
「うっわ、見つかってもうた・・・ってアホ。サボってへんわ。テーピング巻いてんねんテーピング。」
「なーんだ。てっきり部室涼しいからサボってるのかと思ったよ。」
そう言って笑うコイツの笑顔はホンマ反則やと思う。
コールドとエアサロを一本ずつ持ったはそのままハサミを取り出して缶に穴を開けてごみ箱へとそれを投げ捨てた。
環境にええことしとるんやけど投げ捨てんなや。
女らしない奴やなホンマ。
「じゃ、仕事は一段落ついたんでちょっくら家庭科準備室へ行ってきます!」
「はいはい。いつも家庭科準備室で何してんねんな自分。」
「えへへ秘密ー。」
「えへへーってが言うたって可愛いないで。やめとき。」
「このハサミで殴ってやろうか侑士君。」
「・・・・・勘忍な。」
はいつも仕事の暇を見つけては家庭科準備室へと足を運ぶ。
何をしてるんかは知らんけど、家庭科準備室から戻ってくるの手はいつも絆創膏だらけ。
コイツ不器用なくせに、家庭科準備室借りてまで何してんのか。
俺らレギュラーは誰ひとりとして何も知らんかった。
ただに用事があったりした時は家庭科準備室の前まで来てノックするとガシャガシャガシャンッと何とも慌てた音がドアの向こうから聞こえてくるから笑えてくる。
そやけど誰ものしてることを無理に見ようとせぇへんのは俺らは俺らで楽しみにしているから。
アイツが熱心に苦手なことしようとする時は必ずと言ってええくらい俺らテニス部が絡んでる。
だからアイツがこっそり家庭科準備室で何か作ってんのも俺らのためなんやとわかってるからこそ俺らは無理に踏み込まんかった。
部室から出ていくの後ろ姿をぼんやりと見つめながら
握ったままやったテーピングをがわざわざ俺の隣に置いていったハサミで切った。
まさか、これが生きてるアイツの最後の姿になるなんて、俺は思いもせぇへんかったんや。