君の死、僕の涙
俺達には失いたくない大切な奴がいた。
そいつはまるで嵐のようで。
突然現れたと思ったら突然いなくなる。
だけど、どんなことがあったって、決して失いたくはなかったんだ。
日常のテニス
あの日もいつも通り元気な声が氷帝学園テニスコートに響き渡っていて、
それを聞き慣れている俺達はまたいつものように光り輝く太陽の下で熱心に黄色いボールを追いかけていた。
「うりゃっ!」
「つっめたー!おいジローそれは反則だろ!」
ちょうど蝉が鳴き始めたそんな季節だっただろうか。
コールドスプレーを持って珍しくも覚醒済みのジローとエアーサロンパスを片手に跳び回る岳人の駆け回る姿を見て
俺はボールを打つ手を止めて息を大きく吸い込んだ。
「お前らいい加減にしねぇと走らせるぞ岳人ジロー!!」
「ゲッ、跡部が怒った!よしジロー今日はここまでな!」
「悔Cー!俺のがちょっと優勢だったのに!!」
俺が怒鳴り付けると顔色を変えてさっさと空になったスプレー缶を救急箱の中に戻して練習に戻る。
空になったなら戻すんじゃねえよ。と思いながら溜め息を吐く。
またあとでに買い出しを頼まねえとな。
確か買い置きがもうなかったはずだ。
とマネージャーであるに視線を向ける。
何処かで見ていたんだろう、は苦笑いを浮かべながら空になったスプレー二本を取り出し、さっさと部室へと戻っていった。
ジローと岳人の二人は何かにつけてよく勝負事をしている。
それはこの時のようにコールドとエアサロの掛け合いだったり、テストの点数だったり様々だが、部活中にまでやるとはアイツらにも困ったものだ。
部活は部活、遊びは遊び。
それくらいの区別はつけてほしいものだがどうやらそれは無理だろうな。
言って聞くような奴らではないし。
マネージャーであるは結構ジローと岳人の二人には優しい。
というよりは少し上から目線で物事を見ている。
まるで二人の保護者だな。
可愛いものや可愛い人間が好きだからだろうけど怒る時は怒ってほしいものだ。
これが忍足相手ならまた血相変えて怒鳴り散らかすんだろう。
こうして今日もまた、俺達はテニスという一つの共通のものの中で青春という名の汗を流してはボールを追い続けていた。